原題 | The Danish Girl |
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制作年・国 | 2015年 イギリス |
上映時間 | 2時間00分 |
原作 | デヴィッド・エバーショフ(『リリーのすべて』ハヤカワ文庫) |
監督 | 監督:トム・フーパー(『英国王のスピーチ』『レ・ミゼラブル』) 撮影:ダニー・コーエン(『英国王のスピーチ』『レ・ミゼラブル』『ルーム』) 音楽:アレクサンドル・デスプラ(『グランド・ブダペスト・ホテル』) |
出演 | エディ・レッドメイン(『レ・ミゼラブル』『博士と彼女のセオリー』)、アリシア・ヴィキャンデル(『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』『コードネームU.N.C.L.E』)、ベン・ウィショー(『追憶と、踊りながら』『007スカイフォール』)、セバスチャン・コッホ(『善き人のためのソナタ』)、アンバー・ハード(『ラム・ダイアリー』)、マティアス・スーナールツ(『君と歩く世界』『フランス組曲』) |
公開日、上映劇場 | 2016年3月18日(金)~全国ロードショー |
受賞歴 | 第88回(2016年)アカデミー賞助演女優賞 受賞(アリシア・ヴィキャンデル) |
リリーの魂がフィヨルドの空に舞う、映画史に残る美しいラストシーン!
“リリーのすべて”を受け入れ、そして愛した妻の物語
パリ北駅。これから世界初となる未知の手術を受けにドイツへ向かうリリーを見送る妻のゲルダ。夫の女性として生きたいという気持ちに寄り沿い、大切に見守ってきた。手術によって完全に夫ではなくなってしまう寂しさと不安がつのる中、自分らしく生きられる喜びに目を輝かせるリリーを祝福しようと、自分のストールをリリーの首に優しくかける。ゲルダを演じたアリシア・ヴィキャンデルの複雑な想いを秘めた表情は、はかり知れない愛情をそそぐ慈悲深さであふれていた。
本作は、1930年に世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの生涯をモチーフに書かれた小説「The Danish Girl」を基に映画化されている。『英国王のスピーチ』でアカデミー賞監督賞を受賞したトム・フーパー監督がメガホンをとり、『博士と彼女のセオリー』で主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインが性別違和のリリーというデリケートな役柄をうっとりするような華麗な演技で魅了する。そして、『ロイヤル・アフェア愛と欲望の王宮』のアリシア・ヴィキャンデルがリリーに献神的な愛を捧げるゲルダを演じ、助演女優賞に輝いた。リリーのすべてを受け入れ、共に生きた女性のしなやかさを、主演女優賞に値する存在感で圧倒する。
【STORY】
1926年のデンマークのコペンハーゲン。画家同士のアイナーとゲルダは、お互いの才能を尊重し合う仲のいい夫婦だった。アイナーはフィヨルドの風景を好んで描く風景画家として高い評価を受けていたが、肖像画を得意とするゲルダの方はまだ認められてはいなかった。ある日、ゲルダに頼まれてバレリーナの足の部分だけのモデルをすることになったアイナーは、絹のストッキングにトゥシューズを履き美しいサテンのチュチュを身に纏う。すると突然体の内部から恍惚にも似た感情が沸き上がってくる。それからというもの、シャツの下にゲルダの下着を付けて、女装に強い関心を示していく。
ゲルダはそんなアイナーに戸惑いながらもメイクを教えたりドレスを選んだりしてリリーといる時間を楽しんでいた。さらにリリーをモデルに肖像画を描き始めるとたちまち注目され、ゲルダも肖像画家として認められていく。
ゲルダは人気が出てきたご愛嬌に、リリーをパーティーへ同行する。初めて人前に出たリリーは男性からの視線に戸惑いと恥じらいを見せるが、ヘンリク(ベン・ウィショー)という青年にくどかれキスを迫られると、抑えてきた女性としての気持ちに驚く。それを目撃したゲルダは急に不安になり、女装を止めるように言うが、リリーは抑えきれない感情に押しつぶされて病気になってしまう。そして、「女性として生きたい」と夫に告白されるゲルダ。それは女装させた自分に責任があるのではと自責の念にかられつつ、夫の想いを理解し、優しく見守ろうとする。それからというもの、日に日に美しくなっていくリリー。恋する少女のような表情を見せたり、愛らしいリリーを目の当たりにし、夫が次第に遠ざかっていく寂しさをつのらせる。
画家としての活動の場をパリに移し心機一転をはかる二人。ゲルダは、リリーの幼なじみのハンス(マティアス・スーナールツ)と会わせることで以前の夫を取り戻そうとするが、それも叶わず。様々な医療機関で受診させても異常者扱いされ深く傷つくばかり。苦悩するリリーを支え続けるゲルダ。リリーが本当に自分らしく生きられるよう願った末に出会ったドイツの産婦人科医師から、世界でも初めてとなる男性から女性になる手術の提案を受ける。そして、その手術を受けにドイツへと向かうリリー。
妻として夫に愛されない寂しさ、元々女性として生きるべき性別違和に苦しむリリーを心配する想い。現代のように性別違和や同性愛などへの理解も知識もなかった時代、偏見や中傷に耐えながらもリリーを支え続けたゲルダの強い想いは想像を絶するものがある。お互い芸術家として個性を尊重する気持ちが一般人より強かったせいもあるだろうが、何よりお互いを必要とし、男女を超越した堅い絆で結ばれた二人だからこそ貫けた勇気ある愛の成せる技だろう。術後のリリーを母親のような眼差しで見守るゲルダ。ひたすらリリーの幸せを願う姿がそこにはあった。
ラスト、リリーが繰り返し描いてきたフィヨルドに立つゲルダとハンス。リリーが子供の頃家族と一緒に過ごした避暑地で、自分に女性としての気持ちが備わっていることに初めて気付いた思い出の場所でもある。ずっと抑えられてきた気持ちが、ゲルダの寛大な愛情で開放され、さらにいま、魂となって自由に大空に羽ばたいていく――映画史に残る美しいラストシーンに、身も心も奪われてしまった。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://lili-movie.jp/
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