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『ルーム』

 
       

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作品データ
原題 ROOM 
制作年・国 2015年 アイルランド、カナダ 
上映時間 1時間58分
原作 原作・脚本:エマ・ドナヒュー「部屋」
監督 監督:レニー・アブラハムソン(『FRANK-フランク-』)  撮影:ダニー・コーエン(『英国王のスピーチ』『レ・ミゼラブル』『リリーのすべて』)
出演 ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョアン・アレン、ショーン・ブリジャース、トム・マッカムス、ウィリアム・H・メイシー
公開日、上映劇場 2016年4月8日(金)~TOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都、ほか全国順次公開
受賞歴 第88回(2016)アカデミー賞 主演女優賞 受賞(ブリー・ラーソン)

 

~切ない輝きにあふれた、母と息子の世界へようこそ。~

 

閉ざされた小さな世界=部屋で、幼い息子ジャックを育てる母親。5歳の誕生日を迎えたジャックにとって部屋は、宇宙ほど広大な空間に思えていた。少年には想像もできるはずはない。母の愛が、そんな神秘を引き起こす訳は…。


room-500-2.jpgジャックは、大好きなママとふたりっきりで、毎日いろんな“冒険”をして過ごす。その部屋が、世界のすべてだと信じていたから。キッチンの代わりの洗面台、日光が足りなくていつも枯れてしまう植木鉢、使い慣れたテーブルや椅子にも、毎朝おはようの挨をする。習慣は大事だ。規則正しい生活は、ちゃんとした人間になる秘けつだし、部屋の端から端まで全速力で駆けると息が切れるけど、気分がすっきりする。アリスの物語は、何度読んでもらっても聞き飽きない。ママはとてもたくさんのことを教えてくれる。だからママが、ジャックの髪にはパワーが宿っていると言う時、彼は自分がヒーローに思えた。けれど、ママがずっと秘密にしていた本当の世界の話を聞くことになり、楽しかった冒険は終わってしまった…。


本当のことを知りたい好奇心と不安に揺れるジャックは、日曜に差し入れしてくれる男“オールド・ニック”に「ママが誘拐され、自分たちが7年間も監禁されている」ことが理解できない。本当の世界って、なに? 想像もできない恐怖に襲われ、本当の話なんて知りたくないと思うジャックに「ママを助けて」と説き伏せて母は、息子を救うために脱出作戦を決行する。

 
room-500-1.jpg本当のことを言えるのは勇気があるからで、それは“ヒーロー”にしかできないことだったとジャックが知るのは…。ふたりがどんなふうに生きてきたか、脱出後の母と息子の変化が対照的に描かれる。生まれて初めて目にした本当の世界の大きさに身をこわばらせるジャックは、混乱し、言葉にならない思いに胸が押しつぶされそうになるけれど、次第にこどもらしい適応力で現実と向き合い、部屋の外の世界もまた愛で満たされているのだと信じ始める。一方、母親ジョイ(脱出を計画した時、初めて息子に自分の名前を教える。彼女がどれほど絶望感を深めていたかを読み取らせる)は、二度と取り戻せない人生の現実を前に打ちのめされて、心は囚われたまま。そんな母を救おうとしてジャックは、思いもかけない行動を起こす。


room-500-3.jpg忌むべき犯罪に巻き込まれた被害者女性を、匿名性のもとにヒロイン化した悲劇ドラマではない。5歳の息子の視点で描くことで、シリアスな題材にぎりぎりのファンタジーをまとわせた斬新さ、上まわる衝撃を与えながら、親子、家族の愛の美しさを心に刻みつけるラストシーンが素晴らしい。思わず抱きしめたくなるほどか弱いこども、ふいに逞しくも感じられるジェイコブ少年の感度の高い存在感。アカデミー賞主演女優賞を射止めたブリー・ラーソンの繊細な演技には、ただただ惹きつけられた。

(映画ライター:柳 博子)

公式サイト⇒ http://gaga.ne.jp/room/

©ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015

 

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