原題 | IXCANUL |
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制作年・国 | 2015年 グアテマラ・フランス |
上映時間 | 1時間33分 |
監督 | 監督・脚本:ハイロ・ブスタマンテ |
出演 | マリア・メルセデス・コロイ、マリア・テロン、マヌエル・アントゥン |
公開日、上映劇場 | 2016年3月5日(土)~シネ・リーブル梅田、近日~元町映画館、ほか全国順次公開 |
受賞歴 | 第65回ベルリン映画祭銀熊賞受賞 |
~大地とつながり、生を営む母娘のたくましさ~
メキシコの南、古代マヤ文明が繁栄したグアテマラの高地で、農業を営む両親と暮らすマリアは17歳。妻に先立たれた子持ちの地主に嫁ぐことになるが、農園で働く若い青年に恋をし、身ごもってしまう。青年はアメリカに旅立ち、ひとり取り残されたマリアの体の変化に気付いた母親は…。
グアテマラでは、マヤ系の先住民が国民の半数近くを占めながらも、役所や病院といった公的な場所では、スペイン語しか通じず、人種差別が根強く残っている。監督自身、幼少期を、マヤ高地で過ごし、マヤとメスティソ(インディオと白人の混血)との差別を目にしてきたという。マリアたち家族は、言葉が通じないために、予期せぬ問題にぶつかることになるが、そんな運命をも受け入れ、前を向いて生きていこうとする姿に勇気づけられる。
縁談がうまくいかなければ、農園を出ていかなければならない。それでも、愚痴を言わず、マリアをあたたかく守りいたわる母親の、おおらかな包容力に圧倒される。風呂場で、娘の体を洗い流す母親とのシーンでの、光と闇とが溶け合ったような深みのある映像の美しいこと。母と娘の強い絆が映画の柱の一つとなり、母の存在は、大地の象徴のようでもある。マリアもまた、胎児の「命」を感じることで、自身を確立していく。映画の冒頭と最後に、母に髪飾りをつけてもらうマリアの顔が映し出されるが、その表情はきっと違ってみえるにちがいない。
本作では、出演者のほとんどが演技経験がなく、現地で生活している人々。監督はワークショップを通じて脚本を書き上げ、水も電気もない火山地帯で撮影を進めた。伝統的な儀式や、日常に溶け込んだ習慣など、大地と風と水と深く結びついた生活のありようが丁寧に描かれ、まるでドキュメンタリーを観ているようで、興味深い。神秘的な自然の中で、幾つもの悲しみを乗り越え、強く生き抜く母娘の姿を観てほしい。
(伊藤 久美子)
公式サイト http://hinoyama.espace-sarou.com/
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