原題 | The Big Short |
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制作年・国 | 2015年 アメリカ |
上映時間 | 2時間10分 |
原作 | マイケル・ルイス(「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」文春文庫刊) |
監督 | 監督・脚本:アダム・マッケイ 脚本:チャールズ・ランドルフ |
出演 | クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット、メリッサ・レオ、ハミッシュ・リンクレイター、ジョン・マガロ、レイフ・スポール、ジェレミー・ストロング、フィン・ウィットロック、マリサ・トメイ |
公開日、上映劇場 | 2016年3月4日(金)~TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸 ほか全国ロードショー |
成功は自分の手柄、失敗は○○になすりつける
インモラルなウォール街 VS 金融危機を予測した男たち
成功報酬は自分のポケットにねじ込み、たとえ巨額損失を出しても責任は問われないというまさかの“待遇”によって、世界経済の中心・ウォール街は手厚く保護されている(!)ことに驚いている場合じゃなかった。彼らの失敗の尻拭いをさせられているのは誰あろう納税者だってご存知? “やった者勝ち”的なインモラルがまかり通ってる(通してるのは誰か)この世界では、望みもしないのに圧倒的大多数の普通の人々が、ディーラーがルーレットを回すカジノのテーブルに座らされていただなんて。
元債券ディーラーでベストセラー作家マイケル・ルイスの原作「世紀の空売り 世界経済の破綻にかけた男たち」を映画化した「マネー・ショート 華麗なる大逆転」が描くのは、2008年に世界経済に大打撃を与えたいわゆるリーマン・ショックにまつわる驚愕の真実。
3年間でウォール街に見切りをつけたマイケル・ルイスが、「世紀の空売り~」を著するに至ったいきさつが因果めいている。自らの体験にもとづく処女作「ライアーズ・ポーカー」は、当時の上司でウォール街の帝王と恐れられたジョン・グッドフレンドなる人物を辞任に追い込むことになった金融業界のバイブルとして知られ、結果的にはリーマン・ショックの誘因となるモーゲージ債(住宅ローンの小口債券)誕生の逸話も明かされている。その後、危惧していた破綻が現実のものとなった時、マイケル・ルイスが強い関心をもったのは、大手投資銀行を破綻させた元凶“サブプライム・モーゲージ債”のからくりを見抜いた人間はいたのだろうか?だった。…いた。こうしてリーマン・ショックの実相を描いた類稀な1冊「世紀の空売り~」が編まれた。
弁護士からウォール街に転職したスティーブ・アイズマンは、スティーブ・カレルの演じたマーク・バウムとして登場する、アナリスト・チームを率いるウォール街のドン・キホーテ。幼少期に片眼を摘出したことからアウトロー的な生き方を好んだマイケル・バーリは、医者をやめて投資家になったかなりの変人。そんな孤高のキャラクターを、クリスチャン・ベールがストイックに演じている。そのマイケル・バーリの“読み”を察知したドイツ銀行の野心あふれる銀行マンに扮したのがライアン・ゴズリング。そしてマイケル・ルイス原作の「マネーボール」に主演したブラッド・ピットは、大穴を狙う若者ジェイミーとチャーリーを指南する元銀行家ベン役で出演。
文字通り世界経済の破綻に賭け、巨万の富を得た4人の男(原作では3グループ)たちのそれぞれの闘いを描いた本作では、CDO、CDSといった金融商品名が飛び交う。分かりやすさに配慮し、スクリーンのこちら側に語りかける、たとえ話の挿話など演出に工夫はあるけれど、頭の中に「?」が浮かぶ…。
たとえば、金融商品を成型ステーキとイメージしてみた。知らずにつぎはぎステーキを食べているとしたらぞっとする。“無知は罪なり、知は空虚なり、英知持つものは英雄なり”とはソクラテスの言葉だが、どうやら現代では、英知でお金儲けに走る者を英雄と呼ぶらしい。
(映画ライター 柳 博子)
公式サイト⇒ http://www.moneyshort.jp/
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