原題 | THE MARTIAN |
---|---|
制作年・国 | 2015年 アメリカ |
上映時間 | 2時間22分 |
原作 | アンディ・ウィアー『火星の人』ハヤカワ文庫SF |
監督 | リドリー・スコット |
出演 | マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ、キウェテル・イジョフォー、ジェフ・ダニエルズ |
公開日、上映劇場 | 2016年2月5日(金)~TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、OSシネマズミント神戸、MOVIX京都他全国ロードショー |
受賞歴 | 第73回ゴールデングローブ賞作品賞、男優賞受賞 第88回アカデミー賞作品賞、主演男優賞他主要7部門ノミネート |
~火星に一人ぼっちでも、どっこいポジティブサバイバル!!~
マット・デイモンがまた宇宙でひとりぼっちか・・・と、SF好きの方なら思うかもしれない。クリストファー・ノーラン監督の大ヒット作『インターステラー』で自らの業が災いし、惑星に取り残されるヒールな役を演じていたのは記憶に新しいところだが、本作はまさに真逆の一生懸命なサバイバルぶりを見せている。火星で一人取り残され、当分救いが来ない状況なのに、決して悲観せず、飄々淡々と活路を見い出していくのだ。究極に悲観的な状況の中、半ば自虐的なユーモアをはさみながら、いい塩梅のポジティブさで助けを待つのが、マット・デイモン演じる主人公マーク・ワトニー。単なる壮大なSFサバイバル物語ではない、うれしいサプライズがいっぱいだ。
火星での有人探査中、嵐に巻き込まれた宇宙飛行士マーク・ワトニーは、乗組員の捜索もむなしく死亡したと思われ、一人取り残されてしまう。空気も水も食料もわずか、通信手段もない危機的状況でも、ワトニーは悲劇のヒーローに陥ることなく、助けがくるであろう4年後まで生き延びるにはどうすればいいかを考え、「火星で自給自足」の生活を試みるのだ。火星で芋栽培、水も作る。理系にはとんと縁のない私だが、生物や化学は究極のサバイバルの助けになるんだなと感心してしまう。順調にいったかと思えば、一瞬のうちに嵐に巻き込まれ全てが振り出しに戻ったり、苦難に次ぐ苦難。でも見るのが辛くなるような悲壮感があまり漂わない。マークならこの状況をどう乗り切るのだろうと、むしろ期待感を持って見てしまうのだ。
むしろ緊張感が漂うのは、NASAや火星探知機でマークと一緒だった乗組員たち。死んだと思っていたマークが生きていると分かり、食料補給作戦や救助作戦を試みるが、どれも難易度がハンパじゃない。このあたりの描写は王道SFらしさを感じるし、後半のメリッサ・ルイス船長(ジェシカ・チャステイン)を筆頭とした乗組員たちの大救出作戦は、NASAの指示か、現場の判断か、究極の選択に迫られながらも、二度と見捨てないという気持ちでリスク覚悟の作戦打って出る様子が、ダイナミックに描かれている。
最後に、壮大な歴史物に定評のある名匠、リドリー・スコット監督の挑んだSFである本作が、ゴールデングローブ賞で、なんとコメディー/ミュージカル部門にて作品賞と男優賞の2冠に輝いているのも意外性があって面白い。マット・デイモンはともかく、リドリー・スコット監督がそこを狙っていたかどうかは謎だけれども。
(江口由美)
(C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved