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『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』

 
       

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作品データ
原題 99HOMES
制作年・国 2014年 アメリカ 
上映時間 1時間52分
監督 ラミン・バーラニ
出演 アンドリュー・ガーフィールド、マイケル・シャノン、ローラ・ダーン他
公開日、上映劇場 2016年2月20日(土)~テアトル梅田、3月5日(土)~シネ・リーブル梅田、今春京都シネマ他順次公開
 

~家を奪われる怖さより、良心を失う怖さ。不条理な世の中に一筋の光が射す物語~

オープニングから不動産ブローカーと警察が、住宅ローンを払えなくなった一家の強制退去に踏み込むシーンが臨場感たっぷりに展開し、圧倒される。今まで住んでいた家から重要な荷物をまとめる猶予時間はたった2分。身ぐるみ剥がされるとは、まさにこのことだ。こんなに生々しく、まるで強盗に押し入られたように家の中が荒らされ、そして家族の集う場所が奪われる様を映し出すとは。リーマンショック後の強者、弱者や、格差の拡大をを描いたハリウッド映画は多々あれど、法や警察を味方につけて金儲けに走る不動産ブローカーの世界を、ここまでサスペンスタッチで描いた作品はないだろう。
 
 
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監督はイランからの移民二世のラミン・バーラニ。日本での劇場公開は本作が初めてだが、独自の視点で移民の現実を描いた“アメリカン・ドリーム三部作”で知られる実力派だ。『CUT』で知られるイランを代表する映画監督、アミール・ナデリも共同脚本として名を連ねた。家族の思い出の詰まった家を取り戻すため、手段を選ばない野心に突き動かされた男が直面する光と影、その背景にある不条理な社会を実に力強く描写。特に様々なマイノリティたちの暮らしぶりが丁寧に描かれているところに魅力を感じるヒューマンストーリーでもあるのだ。
 
母親と息子の3人で暮らすシングルファーザーで大工のデニスを演じるのは、『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールド。彼が住むのは、小さいころから家族でずっと住み続けている、母の仕事場(美容院)も併設した一軒家だ。マイケル・シャノン演じる、デニスの自宅の強制撤去に訪れる不動産ブローカー、リック・ガーバーと、最初は敵対関係になるものの、デニスは家族に内緒で、再び家を取り戻すため彼の右腕になる決意をする。強制撤去されるときは非情に見えていた作業員たちも、デニスが一緒に仕事をし始めると、強制撤去後の後始末を生業として暮らすマイノリティの生活が垣間見えるのが興味深い。非情で野心に満ちたガーバーですら、カリスマ性は大いに感じるものの、100%イヤな奴としては描かれていない。マイケル・シャノンの演技によるところも大きいし、彼もかつては不条理な社会の被害者であったと分かるからだ。
 
 
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搾取するもの、されるものの構造以外に、本作の一番大きなテーマは、やはり「家」である。家族が集うベースとなる家も、不動産ブローカーから見れば単なる「箱」でしかない。デニスがようやく買い戻した家ですら、その仕事を知った母から拒絶されてしまう。家族の心が一つになってこそ、そこは「家」と呼べるものになるのだ。人としての道を踏み外してまで目の前の稼ぎに猛進していたデニスが迎えた最大の危機と、その結末、そして最後にガーバーが語る台詞は忘れられない。癒着や慣習にまみれた成功伝説を誰が止めるのか。その声を上げる勇気が、罪なき庶民を、そして不幸な成功者を救う唯一の道のように思えた。
(江口由美)
 
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