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『スティーブ・ジョブズ』

 
       

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作品データ
原題 Steve Jobs  
制作年・国 2015年 アメリカ 
上映時間 2時間02分
監督 ダニー・ボイル
出演 マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット、セス・ローゲン、ジェフ・ダニエルズ、マイケル・スタールバーグ、キャサリン・ウォーターストン、セーラ・スヌーク他
公開日、上映劇場 2016年2月12日(金)~TOHOシネマズ日劇、TOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、イオンシネマ板橋、109シネマズ二子玉川、お台場シネマメディアージュ、品川プリンスシネマ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、あべのアポロシネマ、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸ほか公開

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~家庭に背を向けて世界を変えたカリスマ、その言葉の洪水の裏にあったもの~

 

今やコンピュータなくして、この社会は動かない。そのIT社会の礎を作り、発展させたのが、2人のカリスマ、スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツである。観た人も多かろうが、スティーブ・ジョブズについては、2013年にアシュトン・カッチャー主演、ジョシュア・マイケル・スターン監督で映画が制作されている。通常の伝記的要素の強かったそれに比べ、本作のほうは少々凝った演出が為されている。


jobs-500-1.jpg1984年の[Macintosh]、アップル社を追われて新会社で作った1988年の[Next Cube]、アップルに復帰してからの1998年の[iMac]、それぞれの新製品発表会本番40分前の舞台裏を緻密に描きながら、ジョブズの人となりと彼の歴史を浮き彫りにしてゆくのである。すでに実力派として認知されているマイケル・ファスベンダーが喋るわ喋るわ…ようこんな長い台詞をきっちりこなしましたねえと感嘆するほど!その台詞には嫌味や皮肉や頑固一徹がこれでもかと言わんばかりに盛り込まれ、変人あるいは奇人あるいは“あまりおつきあいしたくない人”と見なされていたらしい彼のキャラを鮮明に印象づける。一方で、天才とは“強いこだわり”を抱き、周囲が何と言おうがどう見ようが、その信念のもとに突き進む人のことではないか、と思わせる力もあるのだ。


jobs-500-2.jpgこの映画では、ふたりの女性が、仕事一筋で常に孤立しかねない危機を背負っていたジョブズに大きな力を与えている。ひとりは、アップル社を退いた時もその後もずっと彼の仕事のパートナーであったジョアンナ(ケイト・ウィンスレットが、台詞の応酬も含め的確な演技を見せている)と、娘のリサである。リサの成長と共に違った確執を抱え込んだジョブズだが、最後にはほっと心をなごませる場面が用意されている。ほとんどトラブル男とも言える彼が他人に見せなかったもの、真に求めていたものとは何だったのか。なぜ彼はそれほど“強かった”のか。映画を観終わった後、一人ひとりの胸の中で、その答えは少しずつ違っても、ゆっくりと熟成してゆく…そんな感じを受けるダニー・ボイル監督の力作だ。

(宮田 彩未)

公式サイト⇒ http://stevejobsmovie.jp/

(C)Universal Pictures

 

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