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『ストレイト・アウタ・コンプトン』

 
       

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作品データ
原題 STRAIGHT OUTTA COMPTON
制作年・国 2015年 アメリカ
上映時間 2時間27分
監督 F・ゲイリー・グレイ
出演 コーリー・ホーキンス、オシェイ・ジャクソン・Jr、ジェイソン・ミッチェル、オルディス・ホッジ、ニール・ブラウン・Jr、ポール・ジアマッティ
公開日、上映劇場 2015年12月26日(土)~梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー
 
 

~不条理に声を上げろ!ヒップホップグループN.W.A、魂の実話~

 
ハリウッドやディズニーランドと西海岸屈指の観光地の顔を持ちながら、少し場所が違えば本当に危険な場所だったロサンゼルス(LA)80年代半ば。私が初めて海外を訪れ、LAに滞在したのもこの頃で、映画冒頭の警察によるがさ入れや、周辺にいた人を手あたり次第逮捕する警察の横暴ぶりが容赦なく映し出されるのを見て、当時こんなに壮絶で人権を無視した制圧が行われていたのかと愕然とした。LAの南に位置し、アメリカ屈指の危険地帯と呼ばれたコンプトンで86年に結成され、ラップで権力者に立ち向かったヒップホップグループN.W.Aの10年に渡る魂の記録『ストレイト・アウタ・コンプトン』。リアルな社会描写と、差別に立ち向かう力強い歌が、スクリーンから力強く訴えかけてくる。
 
 
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86年、カリフォルニア州コンプトンでは麻薬売買が横行し、ギャンググループの対立、警察の黒人に対する横暴ぶりなど、危険な空気が漂っていた。ドラッグ業から足を洗い、音楽ビジネス進出を考えていたイージー・E(ジェイソン・ミッチェル)は、DJのドクター・ドレー(コーリー・ホーキンズ)、作詞の才能を持つアイス・キューブ(オシェア・ジャクソン・Jr)らと5人でN.W.A.を結成する。怒り包み隠さぬ言葉でラップに乗せて歌うN.W.A.は大ブレイク。警察によるライブ監視や、FBIからの警告状など、「世界で最も危険なグループ」とまでうたわれるようになったが、グループ内では運営体制に対する不満がくすぶり始めていた。
 
 
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グループの成功を謳歌した時期はあまりにも短かかった。アイス・キューブの独立、成功に導いた業界ビジネスマン、ジェリー(ポール・ジアマッティ)との金銭トラブル、そしてついにはドクター・ドレ―の脱退と、N.W.A.も数々の名音楽グループと同じような軌跡をたどっている。しかも、病魔に侵されていたイージー・Eは31歳の若さで亡くなり、もはや再結成も望めないのだ。だが、彼らが当時社会にどれだけの影響を与え、そして権力側の締め付けに対しても、臆することなく自らの表現を貫いたかは、ライブシーンをはじめ、本作の端々から伝わってくる。アイス・キューブ、ドクター・ドレ―が製作を務めている他、アイス・キューブ役を実の息子、オシェイ・ジャクソン・Jrが演じ、N.W.A.の魂そのものを見事に甦らせた類まれなる音楽映画。彼らが生まれ育ったアフリカン・アメリカンやヒスパニック系が多く住むコンプトンのリアルな描写にも、加熱する一方の人種問題の一端を見た思いがした。(江口由美)
 
公式サイト⇒ http://soc-movie.jp/
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