原題 | My Old Lady |
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制作年・国 | 2014年 イギリス・フランス・アメリカ合作 |
上映時間 | 1時間47分 |
監督 | イスラエル・ホロヴィッツ |
出演 | ケヴィン・クライン、マギー・スミス、クリスティン・スコット・トーマス、ドミニク・ピノン、ノエミ・ルボフスキー、ステファン・フレイス他 |
公開日、上映劇場 | 2015年11月14日(土)~Bunkamuraル・シネマ、1月2日(土)~下高井戸シネマ、11月28日(土)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、近日~京都シネマほか全国順次公開 |
~実力派演技陣による“すったもんだ”協奏曲。
暗雲のち快晴の余韻を味わう~
古さと新しさが交差するパリのマレ地区、ひとりのアメリカ人が或るアパルトマンを訪れる。マティアスという名の50代のこの男は、亡くなった父から相続したそのアパルトマンを売却しようと、はるばるニューヨークからやって来たのだ。ところが、そこには90歳になるマティルドという女性が住んでおり、フランス伝統の「ヴィアジェ」という不動産売買制度の壁が彼の前に立ちはだかる。それは、もともとの所有者であるマティルドが亡くなるまで物件を売り払うことはできないうえ、月に2400ユーロを年金みたいに彼女に払い続けなければならないというもの。そんなことを全く知らなかったマティアスは驚愕と怒りに襲われるが、ニューヨークに帰るお金もなく、マティルドに部屋を借り、対策を練ろうとする…。
やっぱり、名も知れ、実力もある人たちが醸し出す“華”なんだなあと思う。主要の3名優に加え、ジャン=ピエール・ジュネ監督作でもおなじみの、一度見たら忘れられない風貌のドミニク・ピノンの登場も嬉しい。もともと戯曲作家であるイスラエル・ホロヴィッツ監督が初めてメガホンを取り、世界各地の舞台でたびたび上演されてきた自身のヒット作を映画化したのがこれ。丁々発止のせりふの応酬など、演劇的要素がスクリーンからも感じとれる。
単に遺産を受け継ぐために訪れたパリで、知らされていなかった過去の秘密のロマンスが飛び出してくるという展開がロマンティックだ。利害の衝突で始まり、大騒動の後、今は亡き人の想いを知って人生を新しくやり直すという結末まで、それぞれの立場に身を置き換えながら、物語の進行を楽しめる。もう一つ、魅力的なのが、パリの趣ある街並みや建物。ああ、一度住んでみたいと思わせるほどに素敵で、古くて不便な建物でもきちんと手入れしながら残しているヨーロッパの街がまた恋しくなった。しかしまあ、「ヴィアジェ」のような制度が高齢化社会驀進中の日本に当たり前にあるとしたら、これまた大変なことであろうと想像してみるのである。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://souzokunin-movie.com/
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