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『バクマン。』

 
       

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作品データ
制作年・国 2015年 日本 
上映時間 1時間59分
原作 大場つぐみ、小畑健『バクマン。』ジャンプ コミックス/集英社刊
監督 ・脚本:大根仁
出演 佐藤健、神木隆之介、染谷将太、小松菜奈、桐谷健太、新井浩文、皆川猿時、宮藤官九郎、山田孝之、リリー・フランキー他
公開日、上映劇場 2015年10月3日(土)~TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ二条他全国ロードショー
 

~少年ジャンプ好き必見!スポ根ならぬマンガ根青春ドラマが超アツい!!!~

 
スマホの登場以来、電車内での乗客のほとんどがスマホいじりに没頭しているのが当たり前となったが、かつて、サラリーマンや学生の電車内必携物はスポーツ紙、週刊誌や週刊マンガだった。特に、週刊少年ジャンプは68年発刊以降、『ど根性ガエル』、『きん肉マン』、『北斗の拳』、『ドラゴンボール』と、新しい才能を積極的に採用し、今でも少年マンガ雑誌の雄に君臨している。『DEATH NOTE』の作者、大場つぐみ、小畑健によるマンガ家の卵の高校生を主人公にした『バクマン。』は、週刊少年ジャンプ編集部の裏側やマンガ制作の作業ぶりなどがきめ細かく描写され、青春ストーリーとしても、業界ものとしても楽しめる人気作だ。この『バクマン。』を実写化したのは、自身も大のマンガ好きという大根仁監督(『モテキ』)。とにかくテンポよく、登場人物が魅力的で、サカナクションの手がける音楽が抜群にカッコいい。まさに血沸き肉躍る、マンガバトル青春ストーリーの誕生だ。
 
 
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人気マンガ家の叔父(宮藤官九郎)が大好きで、いつも仕事場を遊び場にしていたサイコー。マンガ家になる夢を抱いていたが、叔父の連載が打ち切りになり、この仕事の厳しさも肌で感じていた。高校生になったサイコー(佐藤健)は、ある日、同級生のシュージン(神木隆之介)に優れた画力を見込まれ、二人で漫画家になろうと誘われる。恋心を抱くクラスメイトの美保(小松菜奈)の影響で、プロの漫画家を目指す決意を固めたサイコーは、シュージンと週刊少年ジャンプ編集部に原稿を持ち込むが・・・。
 
 
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サイコーとシュージンの才能を見抜き、担当となる編集者役の山田孝之や、かつて叔父の編集者で現週刊少年ジャンプ編集長役のリリー・フランキーが、高校生の彼らにプロの世界の厳しさを教え、叱咤激励する。書類山積みの編集部もリアルなら、新人賞受賞作家のうち、誰の作品を掲載するか議論を闘わせる編集会議や、連載継続をかけた読者アンケート集計結果の発表に一喜一憂する様子も、異様な熱気が溢れる。
 
 
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そんなサイコーやシュージンたちの仕事場となる叔父の仕事部屋は、往年のマンガ好きなら泣いて喜びそうなお宝がいっぱい。そこに新人賞受賞同期の面々(桐谷健太、新井浩文、皆川猿時)が集まって、お互いの悩みを打ち明け、クライマックスでは自分の作品をよそに徹夜で助け合いもする。まさに藤子不二雄や赤塚不二夫らがかつて共同生活していた「ときわ荘」の一コマをみているかのようだ。サイコーらの宿敵である、天才高校生マンガ家、新妻エイジを演じる染谷将太の怪演ぶりも見事で『DEATH NOTE』のLにも負けないぐらいの存在感を放つ。各マンガ家たちが劇中で描くマンガも、ヤンキーものからきもカワものまで、書き手のキャラクターに合わせて描かれているのも見どころだ。
 
 
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マンガを描くという地味で根気のいる作業を、佐藤健と神木隆之介が、アクションするかのように巨大筆を走らせ、ペンをシュッシュッと入れる音にリズム系のパーカッション音が重なっていく。まるでセッションを見ているような躍動感たっぷりのシーンや、柔らかい光の中で天使のようにほほ笑む美保の描写など、大根監督のセンスが随所に光る『バクマン。』。適材適所の配役はもちろん、作品に込められた半端ないマンガ愛は、エンドロールが終わるまで、私をしっかり掴んで離さなかった。
(江口由美)
 
(C) 2015 映画「バクマン。」製作委員会
 
 

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