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『ドローン・オブ・ウォー』

 
       

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作品データ
原題 Good Kill  
制作年・国 2014年 アメリカ
上映時間 1時間44分 R15+
監督 アンドリュー・ニコル(『ガタカ』『トゥルーマン・ショー』『ターミナル』『TIME/タイム』)
出演 イーサン・ホーク、ブルース・グリーンウッド、ゾーイ・クラビッツ、ジャニュアリー・ジョーンズ
公開日、上映劇場 2015年10月1日(木)~TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、伊丹) ほか全国ロードショー

 

~増々命が軽視されそうで怖しいドローン戦争~

 

はるか上空から常に監視していきなり攻撃する。近未来SF映画ではない。「9.11」以降、軍事用ドローンの開発は進み、アメリカだけではなく西欧諸国や中国・ロシアでもかなり高性能のドローンが使われているようだが、その実態についてはあまり知られていない。本作では、ドローン操縦士の主人公が感じる、敵地から遠く離れた安全な母国に居ながらにして戦争をするという違和感を通して、一般人の犠牲を伴う遠隔操作爆撃の人道的問題や戦争そのものへの矛盾点を、静かに鋭く突く。『ハート・ロッカー』や『アメリカン・スナイパー』のような緊迫感のある戦闘シーンこそないが、戦争への痛烈な批判と人間性の尊厳を問う強いメッセージが込められている。


drone-500-2.jpg人間の優性遺伝子操作が進化した社会の悲哀を描いた近未来SF『ガタカ』のアンドリュー・ニコル監督とイーサン・ホークが再びタッグを組んだ。優性遺伝子保持者でなければ生き残れないような社会では機械も人間も精鋭化してしまい、自然の摂理を無視した社会の恐ろしさを訴えかけた。本作でも、無人機による戦闘は兵士の犠牲減少には役立っているが、密かに上空から見下ろして攻撃することは、まるで神が天罰を下すような錯覚に陥る。人の命を奪ってまでも為すべきことの意義が薄れ、増々人命が軽視されそうで怖い。
 


drone-500-3.jpg【STORY】
ラスベガスの空軍基地に勤務するトミー・イーガン少佐(イーサン・ホーク)は、かつてはF1-16戦闘機のパイロットで200回以上の出撃経験のある激戦の勇士だった。だが今は、基地内にあるエアコン完備のコンテナでドローンの遠隔操作に従事している。戦闘地から遠く離れた安全な場所で、テロ組織の監視や攻撃、味方の援護などをして、勤務が終わると自家用車でネオンきらめくラスベガスの街中を通って、郊外の閑静な住宅地にある我が家へと帰る。それが良き夫であり良き父であるトミーの日常だが、その平和な生活を享受しながらクリックひとつで多くの人間を殺す日々に違和感を覚えていた。


drone-500-1.jpgある日、CIA主導で行われた対テロ特殊作戦に組み込まれたトミーは、無関係な女性や子供の犠牲をいとわない無慈悲な攻撃命令に、次第に精神的に追い詰められていく。監視対象の家で繰り返されるレイプを黙殺しなければならないジレンマや罪の意識が薄れつつある自分に腹を立て、元ダンサーの美しい妻モリー(ジャニュアリー・ジョーンズ)の不倫疑惑をきっかけに、家庭を崩壊させてしまう。それほど悪化してしまったトミーのPTSD(心的外傷後ストレス障害)。本来の人間性を取り戻すためにトミーがとった行動とは? 
 



最近個人でも使用できるようになった小型ドローンによる問題が頻発しているが、突然の危険な落下物に対しては防御しようがなく、何らかの法整備が急がれるところだ。それがもし爆弾だったら…、戦争だからといって誤爆が許される訳ではない。近年、コンピューターゲームのチャンピオンたちがパイロット養成員に採用されている現状からも、ドローンによって戦闘方法が大きく変わってきているのは確かだ。どこまで痛みを伴う人間性を保ち正確な判断ができるのか、それが大きな課題かもしれない。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://www.drone-of-war.com/

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