原題 | Kuky se vraci |
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制作年・国 | 2010年 チェコ |
上映時間 | 1時間35分 |
監督 | 監督・製作・脚本:ヤン・スヴェラーク |
出演 | オンジェイ・スヴェラーク、ズデニェク・スヴェラーク、オールドリッチ・カイザー |
公開日、上映劇場 | 2015年9月12日(土)~シネ・リーブル梅田、9月26日(土)~シネ・リーブル神戸、順次~京都シネマ ほか全国順次公開 |
~捨てられた“へなちょこテディベア”クーキーの大冒険にエールを!~
実写とパペットを融合したチェコのファンタジー映画『クーキー』は、想像以上にスピード感のある描写と愛情あふれる物語で胸躍らせる作品となっている。2010年に作られて今まで日本で公開されなかったなんて不思議!チェコと言えばマリオネット人形劇やアニメ映画で有名だが、チェコ独自の技術で森の精霊や妖精や小動物などの活躍を美しい映像で捉えて、それはそれは素晴らしい! それにしてもクーキーは、みすぼらしい小さなテディベアだが、捨てられても恐い目に遭っても一途に家を目指す大冒険をする。『トイ・ストーリー』みたいに特別なパワーや仲間がいる訳でもなく、たった一匹で奮闘するその健気さに、子供も大人も心から声援を送りたくなるに違いない。
ヤン・スヴェラーク監督は、『コーリャ 愛のプラハ』(96)でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したチェコを代表する映像作家で、ハリウッドからのオファーを断ってでも、チェコの風土を大事にしたオリジナル作品を撮り続けている。本作では、父親のズデニェク・スヴェラーク(『コーリャ~』では主演)が森の村長の声を担当し、息子のオンジェイ・スヴェラークはクーキーの声と実写の少年オンドラを演じている。親子三代による温もりのある情感も大きな特徴と言える。最初出演を嫌がっていたオンジェイ君は、パパと一緒に過ごせるなら、と引き受けたらしい。クーキーを心配する9歳のオンジェイ君の表情がいい!(先日監督と一緒に来日したオンジェイ君はもうすぐ15歳になるという)。
【STORY】
オンドラ(オンジェイ)はいつもぬいぐるみのクーキーとバブルスを抱いて寝ていたが、喘息の発作を心配する母親にボロボロになったクーキーは捨てられてしまう。洗えるバブルスは残されたものの、大切なクーキーを捨てられたオンドラは心配で堪らない。クーキーの無事をバブルスと一緒に祈り続けたところ、クーキーがゴミ捨て場で危うくショベルカーに押しつぶされそうになったところで命が宿り、森へと逃げ込むことができた。だが、外の世界のことを全く知らないクーキーは、西も東もわからなければ、右も左もわからず、字も読めない。世の中の力関係や悪人も知らない。
そこで助けてくれたのが森の村長をしているヘルゴットだった。無愛想だが、あまりにも危なげなクーキーの面倒を看てくれた。森には村長と敵対するアヌシュカという嘘つきの乱暴者がいて、村長を失脚させる機会を窺っていた。クーキーを追ってきたゴミ男たちをけしかけてクーキーを乗せた村長の車を追いかけたり、命懸けで鳥の巣を救おうとするクーキーたちを邪魔したり、しまいにはクーキーたちが救った鳥の巣を横取りして、森に火を放ったことを村長のせいにしたりと、悪行三昧。
クーキーが森で悪戦苦闘している間に、オンドラは心配のあまり病状が悪化して入院してしまう。果たして、村長の濡れ衣は晴らされるのか?クーキーは無事にオンドラの元に帰り着けるのか?
オンドラ少年の祈りが通じて命を宿したクーキー。(テッドみたいだが、その世界観は純粋無垢!) 何とかクーキーに戻ってきて欲しくて、森の中でいろんな精霊や生き物たちと関わりながら大冒険をするクーキーを想像していく。そう、すべてオンドラ少年の空想の世界がファンタジックに展開していくのだ。3ヶ月もかけて、チェコ国内のいろんな森や麦畑でロケを敢行し、パペットの動きを撮影したというから、奮闘したのはクーキーだけではなかったようだ。
水に濡れると動けなくなるというクーキーの設定がまたドラマチック!村長がクーキーを背負って小川を渡るシーンや、クーキーが中身のおがくずをアヌシュカに燃やされて死にそうになっているところに、鳥たちが巣の卵を救ってくれた恩返しに1枚ずつ羽根を持ってくるシーンでは、思わず目頭が熱くなる。世界一へなちょこクーキーの大冒険は病弱なオンドラ少年の成長物語でもあり、そこにはヤン・スヴェラーク監督の父親として息子オンジェイや子供たちへ伝えたいチェコの伝統芸術や風情や自然を愛する気持ちが盛り込まれているようだ。
こんな愛おしさにあふれた大変貴重な映画『クーキー』を、どうかお見逃しのないように! 子供に見せたい映画ナンバー1の作品です。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://kooky-movie.com/
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