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『カリフォルニア・ダウン』

 
       

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作品データ
原題 San Andreas
制作年・国 2015年 アメリカ 
上映時間  1時間54分(2D・3D)
監督 ブラッド・ペイトン
出演 ドウェイン・ジョンソン、カーラ・グギーノ、アレクサンドラ・ダダリオ、ヨアン・グリフィス、アーチー・バンジャビ
公開日、上映劇場 2015年9月12日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー

 

★「これでもか!!」迫真!大地震の恐怖

 

場内を揺るがす大音響、林立する高層ビルがドミノ倒しに倒れていく。地面は大きく地割れ陥没し、人間が身を寄せる場所もない。凄まじい天変地異に人間はなすすべがなかった…。

“パニックムービー”とひと言では片付けにくい物凄いド迫力災害映画だ。20年前に阪神・淡路大震災を近所で経験し、4年前に東日本大震災→津波→原発爆発という大災害をテレビで見た。“南海トラフ”大地震と津波災害が取り沙汰される今、絵空事とは思えない、さながら“恐怖体験映画”。大地震の再現映像は近年のCG技術の進歩で目を見張るばかりだった。


CAD-500-3.jpgなんとスケールのデカいタイトルか。再現されるのは“観測史上、最大の地震”。ネバダ州のフーバーダムのサンアンドレアス断層帯で群発地震が発生、その衝撃は断層帯に沿って北上、隣のカリフォルニア州へ、ついでロサンゼルスからサンフランシスコにまで達する巨大地震となり、多くの住民に大混乱と壊滅的な被害をもたらす…。


地震学者(ポール・ジアマッティ)は断層の観測から大地震発生を予測、大災害を確信するが、停電のため通信手段が途絶、テレビ・リポーターの助けで住民に警告を発する…。あまりに被害が大き過ぎて、人間ドラマは出る幕がないほどだが、中で目いっぱい頑張るのが救難ヘリのパイロット、ドウェイン・ジョンソン。70年代の大ヒット作『大地震』(74年)ではヒーローを演じたチャールトン・ヘストンに代わって今最も頼れる男ドウェインが主人公レイ・ゲインズ役を務める。冒頭、鮮やかに捨て身の救出劇を見せ、地震発生後は、離婚を切り出されている妻のエマ(カーラ・グギーノ)や娘ブレイク(アレクサンドラ・ダダリオ)救出に力を尽くす。救難ヘリのパイロットでも、被災者救出は不可能。「脳裏に浮かぶ愛する家族」を助けたいと考えるのは本音。というより、助けられるのは家族だけ、なのだろう。

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★「地震、雷、火事、オヤジ」は今…。
 

70年代から80年代に大はやりしたデザスター・ムービーの主役は“避けられない脅威”だった。昔からの言い伝え「地震、雷、火事、オヤジ」が続々と映画化され人気を集めた。


ヘストンの『大地震』をはじめ、高層ビル火災映画『タワーリング・インフェルノ』(74年)が空前の大ヒット。航空パニック映画『大空港』(70年)、『エアポート75』(74年)にはヘストンが出演。その後、このシリーズは長く続いた。海洋パニック映画では豪華客船が転覆する『ポセイドン・アドベンチャー』(72年)も大人気。


“オヤジ”の権威は今は地に落ちたが、当時『ゴッドファーザー』(70年)がテーマ曲とともに話題沸騰、マーロン・ブランド演じるマフィアのボス、ドン・コルレオーネの話し方が流行ったものだ。残念ながら“雷映画”はなかったが、今の日本なら「地震、火山、火事」に、権威失墜の父親に代わって「母親」がその地位を占めるかも知れない。この映画のドウェインなら復権しそうだが。これに「病」を加えれば人間の“不可避”テーマ勢ぞろいになるだろう。


74年版『大地震』で記憶に残るのは画期的な“センサラウンド”方式。4チャンネルのサウンドトラックに低周波の音波を加えて、振動も体感出来る“体験型”が話題を呼んだ。その後、戦争映画『ミッドウェイ』(76年)や『ジェット・ローラー・コースター』(77年)が“見せ場だけ”同方式で上映されたが、映画音響の進化で消えた。それでも2006年にシネラマ大画面で、センサラウンド方式上映されたというから“地震体感”映画はよっぽど好まれたのだろう。


CAD-pos.jpg『カリフォルニア・ダウン』は特殊方式など不要。ほぼ全編、揺れに揺れ、倒壊し続ける大パニックの連続に「もう勘弁」の声も漏れたほど。1300もの視覚効果が使われ、キャラクターと同じ視点で物語に入り込む工夫など、実際に地震を体験したプロデューサー(ボー・フリン)の思いが結実したようだ。


科学技術がどれほど進歩、発展して、巨大建造物を作っても、大地震の前にはひとたまりもなく崩れ去る。人間の営みなど“神の怒り”の前には吹けば飛ぶような“将棋の駒”でしかない。60年代には東側諸国と戦い、同時多発テロ(01年)以後はイスラム国を相手にしてきたハリウッドだが、最後に残った巨大な敵は天災だったと再認識する。見終えた後に感じたのは無力感。製作者の意図と別に、人間の営みの虚しさを痛感した。これが“デザスター・ムービー”に秘められた意義だろうか。

(安永 五郎)

公式サイト⇒ http://wwws.warnerbros.co.jp/californiadown/

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