原題 | FATHERS AND DAUGHTERS |
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制作年・国 | 2015年 アメリカ=イタリア |
上映時間 | 1時間56分 |
監督 | ガブリエレ・ムッチーノ『幸せのちから』 |
出演 | ラッセル・クロウ、アマンダ・セイフライド、ダイアン・クルーガー、オクタヴィア・スペンサー、カイリー・ロジャース |
公開日、上映劇場 | 2015年10月3日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー |
~愛する父を失った娘が、再び愛する勇気を持つまで~
人を心から信頼し、そして愛することは、実に勇気がいることだ。特に幼少時代に親からの愛を十分に得ることができなかった、もしくは不幸にも両親と離れ離れになる運命であった人は、抱えてしまった自分の心の闇と葛藤しなければならない。『幸せのちから』のガブリエレ・ムッチーノ監督は、愛する人を失う怖さや、喪失感、再び愛する力を取り戻すまでの葛藤を、時を越えた父娘の物語に込めた。本作の脚本に感銘し、自ら製作にも携わった主演のラッセル・クロウをはじめ、アマンダ・セイフライドと新人のカイリー・ロジャースの二人が幼少時代と成長した娘を演じ、父が亡くなった後の娘の葛藤をより鮮明に描き出す。
物語は、ケイティの幼少時代となる89年のニューヨークと、大学院で心理学を学ぶ現代と2つの時間軸を交差させながら、進行する形をとっている。ラッセル・クロウが演じる小説家のジェイクは、自動車事故で妻を失い、自身も後遺症に苦しみながら、男手一つで娘のケイティを育てている男。娘に「ポテトチップス」という愛称をつけ、目の中に入れても痛くないぐらいの可愛がりようだ。実際、ケイティ役のカイリー・ロジャースは、父親でなくても骨抜きになるぐらい愛らしい。マイケル・ボルトンがカバーしたカーペンターズの名曲『Close to you』を二人でピアノを弾きながら歌うシーンは、幸せオーラに満ちている。
だが、ジェイクは発作を頻発するようになり、執筆はおろか、ケイティを育てるのもままならない窮地に追い込まれる。ラッセル・クロウの骨太の演技で、けいれんもリアルすぎるぐらいに再現。手が震える中、最後に娘に遺す小説を書く姿も苦痛さがありありと伝わってくる。かなり重いタッチなので、好き嫌いは分かれるところだが、濃密な父娘の時間があったからこそ、その喪失感がケイティを苦しませるのだ。
現代のケイティは、問題のある児童を取り扱うソーシャルワーカーの仕事に精を出す一方、自身は過去のトラウマから人を深く愛することができない。淋しさを紛らわすその場限りの恋を続け、自分で制御しきれない感情に苦しんでいるケイティをアマンダ・セイフライドが、ラッセル・クロウに負けない体当たりの演技でみせ、現代の物語をぐいぐい引っ張る。母を亡くしたショックから一年も口を利いていない少女との地道な交流、父の小説のファンだという青年との出会いを通じて、行きつ戻りつしながらも、一生懸命相手と対峙し、喪失感や恐れを克服しようとするケイティは、人間臭く、そして愛おしい。『パパが遺した物語』は、愛されていた記憶の物語でもある。そして、その愛された実感が、人を愛する勇気を与えてくれるのだ。
(江口由美)
公式サイト⇒http://papa.gaga.ne.jp/
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