原題 | THE INTERN |
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制作年・国 | 2015年 アメリカ |
上映時間 | 2時間1分 |
監督 | 脚本:ナンシー・マイヤーズ(『恋愛適齢期』『ホリデイ』) |
出演 | ロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイ、レネ・ルッソ、ナット・ウルフ、アダム・ディヴィアン |
公開日、上映劇場 | 2015年10月10日(土)~全国ロードショー |
~きりきり舞いの女性社長を救う70歳新人、その絶妙な距離感~
『プラダを着た悪魔』で、メリル・ストリープ演じる鬼編集長のアシスタントを演じたアン・ハサウェイが、今度はファッションサイトの女社長に!その部下役を演じるのが、大ベテランのロバート・デ・ニーロなのだから、その設定だけでも興味をそそられる。しかも、妻に先立たれながら長年培ってきた自らのスタイルをきっちりと維持し続ける、ある意味どこにでもいるようなナイスシニアだ。キャリアも家庭も全力投球で、毎日があっという間に過ぎているような人にぜひ見てほしい、優しい応援歌のような作品。世代を超えているからこそ可能ではないかと思える、絶妙な距離感の二人が微笑ましいような、羨ましいような。
ジュールス(アン・ハサウェイ)は、運営しているファッションサイトを1年あまりで拡大し、成功を収めている業界でも注目の女性社長。ある日、シニアインターン採用された70歳のベン(ロバート・デ・ニーロ)が、ジュールス直属の部下として配属される。若手社員ばかりの会社でスーツ姿のベンはどう見ても浮いた存在。ジュールスも、仕事はメールで指示をすると言ったきりだったが、いつの間にかベンは社員の悩みの相談に乗り、信頼される存在となっていた。ジュールスの運転手の仕事を任され、会社と家庭での様子に触れたベンは、彼女が人知れず悩んでいることに気付くのだったが・・・。
物語はまずベンの目線で、70歳新人のドキドキ感を描いている。40年間電話帳の会社で勤め上げたベンの老後に新たな刺激を与える、シニアインターンへの応募。ビジネスのやり方やスピードが全く違うにも関わらず、ベンはビクともしない。ジュールスから仕事のメールが全くこなくても焦らない。どんな小さな仕事でも、頼まれれば笑顔でこなす。再び会社で役に立てることが生きがいとなっているベンを、ロバート・デ・ニーロが飄々と演じ、まるでそれまでの会社人生が見えてくるようだ。仕事に、恋に悩む社員たちに絶妙なアドバイスを送り、見事な社内の潤滑油ぶりをみせる。だが、ベンが一番気になるのは、仕事も家庭も頑張りすぎて破裂しそうな上司のジュールスだった。
当のジュールスは、仕事を辞め、育メンになった夫のためにもと、会社経営に全力を注いでいる。だが、周りからは新しいCEOを迎える話が浮上し、一人悶々としているのだ。会社での話だけでなく、ジュールスの家庭での奮闘ぶりや、夫とのすれ違い、ママ友の冷ややかな反応も映し出し、ワーキングマザーがぶち当たる壁をリアルに描写。ジュールスを演じるアン・ハサウェイの、強気な言動に潜むどこかチャーミングなところが、一見成功者に思えるヒロインを、同じ悩み多き女性として身近な存在に感じさせてくれる。
ベンのように適度な距離で見守り、いざという時にいつでも相談できる存在の貴重さ。そこには男と女や、上司と部下というくくりを越えた真の友情がある。メールやSNSのやり取りだけではくみ取れない、リアルに人と接することで育まれるものの大きさを、ベンはジュールスや社員たち、そしてともすればオンライン上のつながりに終始してしまう私たちに教えてくれた。
(江口由美)
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