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『ベル&セバスチャン』

 
       

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作品データ
原題 BELLE AND SEBASTIAN
制作年・国 2013年 フランス 
上映時間 1時間39分
原作 セシル・オーブリー『アルプスの村の犬と少年』
監督 ニコラ・ヴァニエ(『狩人と犬、最後の旅』)
出演 フェリックス・ボッスエ、チェッキー・カリョ、ディミトリ・ストロージュ、マルゴ・シャトリエ他
公開日、上映劇場 2015年9月19日(土)~新宿武蔵野館、10月3日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、10月17日(土)~元町映画館他全国順次公開
 
 

~天使のような少年セバスチャンと名犬ベル、フレンチアルプスに癒されて~

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日曜夜のアニメ『アルプスの少女ハイジ』や『フランダースの犬』で育った世代としては、アルプスの山に愛くるしい少年少女、そして彼らを包み込むぐらい大きな名犬という組み合わせはテッパンものだ。本作も、かつて『名犬ジョリィ』としてアニメ化された世界的ベストセラーの児童文学『アルプスの村の犬と少年』を実写化しており、最初から期待値が高かったのは言うまでもないが、少年セバスチャンはまさに天使のような可愛らしさ!セバスチャンと友情を育む野犬ベルの名演技にも、涙が出そうになる。
 
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そして山岳映画かと思うぐらいアルプスの魅力が映し出されているのも、山好きにはたまらない。自身も探検家でもあるニコラ・ヴァニエ監督は、夏山、冬山だけでなく、草花が芽吹く春山といった四季の撮影にもこだわり、人間だけでなく、自然の中で生きる鳥や動物たちもキャメラに収めた。ナチス占領下のフランスを舞台にした「ユダヤ人家族アルプス越え」作戦を支えた勇気ある少年と犬の物語は、家族で楽しめるネイチャーアドベンチャー映画でもあるのだ。
 
 
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43年フランス、アルプスの麓の小さな村で酪農を営むセザールと暮らすセバスチャン(フェリックス・ボッスエ)は、クリスマスにアメリカに行ったママが帰ってくると聞かされ、心待ちにしていた。そんな中、羊が襲われる事件が起き、野獣化した野犬が犯人だと村人たちは罠を仕掛ける。一方、セバスチャンは、偶然泥だらけの野犬に出会い、恐れず話しかけるうちに、心を通わせていく。ベルと名付けて友情を深めていくが、ドイツ兵に噛みついたことがきっかけで、村人を総動員してベル捕獲が始まってしまい・・・。
 
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町にドイツ兵が押し寄せ、戦争の影が忍び寄る中、孤独なセバスチャンが、人間を信じられず野犬と化してしまったベルとの絆を築いていく。曇りのない真っ直ぐな瞳で、友達に話しかけるかのように対話するセバスチャンとベル。彼らがアルプスの山の中を駆け巡る姿にどれだけ癒されることか。同時に、戦争、迫害を繰り返す大人の愚かさも、アルプスの山は全部見ているのだ。
 
 
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クリスマスの夜、セザールの亡くなった妹の娘、アンジェリーナとユダヤ人家族のアルプス越えを道案内するため雪山をコンパス頼りに進むクライマックスでは、ドイツ兵の追跡を食い止める手立てを考える一方、牙をむく自然の脅威にも立ち向かわなければならない。吹雪の中、恐れずに歩みを止めないベルとセバスチャンの命がけのシーンはドキドキハラハラすること必須だ。フランスをはじめ世界中で大ヒットした本作は続編も作られ、今年末にフランスで公開されるという。撮影当時7歳ぐらいと、まさに男の子が天使のように可愛い時期にセバスチャン役を演じたフェリックス君。続編で、成長した姿に出会えるのが、今から楽しみで仕方がない。
(江口由美)
 
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