原題 | Learning to Drive |
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制作年・国 | 2014年 アメリカ |
上映時間 | 1時間30分 |
原作 | キャサ・ポリット(『Learning to Drive』) |
監督 | イサベル・コイシェ(『死ぬまでにしたい10のこと』『エレジー』 |
出演 | パトリシア・クラークソン(『エイプリルの七面鳥』『エレジー』『カイロ・タイム~異邦人~』)、ベン・キングズレー(『ガンジー』『エレジー』『ヒューゴの不思議な発明』)、ジェイク・ウェバー、グレース・ガマー、サリター・チョウドリー |
公開日、上映劇場 | 2015年8月28日(金)~TOHOシネマズ日本橋、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS ほか全国ロードショー |
~大人のための優しい人生再生レッスン!~
「運転にはその人の性格が表れる」とよく言われるが、運転教習を“人生を学ぶ場”としてレッスンすれば、人間的にも成長した安全ドライバーが増えるのでは?とこの映画を見て思った。突然夫に離婚を突きつけられた著名な書評家のアメリカ人女性と、宗教的弾圧からアメリカに亡命してきた伝統を重んじるタクシー運転手のインド人男性。育ちも宗教も文化も住む世界も違う対照的な二人が、運転教習を通じてより良い生き方のノウハウを学び合っていく。失敗しても、つまずいても大丈夫。いくつになっても新たな人生の進路変更はできることを、ニューヨークを舞台に機知とユーモアに富んだ大人のセンスで物語る。
ある日、ダルワーン(ベン・キングスレー)が運転するタクシーに、逃げるように乗り込んできた男とそれを追って激昂した女が乗り込んでくる。浮気相手の元へ走った夫を責める妻。二人は掴み合いの喧嘩をして、夫は吐き捨てるように妻を置いて車を降りる。突然の出来事になす術もない運転手。女性を家まで送り届けたものの、尋常でない動揺ぶりに心配する。後日女性の方から運転教習を受けたいとの連絡が入る。
マンハッタンのアッパー・ウェストサイドに住み、文芸評論家としても有名なウェンディ(パトリシア・クラークソン)は、21年間連れ添った夫が自分に嫌気をさして家を出て行ってしまった。言葉を愛するあまり本の世界に没頭してきたウェンディ。生きている他者への配慮に欠けていたようで、一人娘のターシャも父親に同情的。運転も何もかも夫に頼りきりだったウェンディは、バーモント州の農場で研修中のターシャを訪ねようにも免許がない。そこで、ダルワーンから運転を習うことにしたのだ。
こうして始まった運転教習の日々。夫との復縁を望むウェンディだったが、彼女の稼ぎで築いてきた財産分与を求める夫の仕打ちに、希望は悉く打ち砕かれていく。そのせいで運転にも身が入らない。頭にターバンを巻いたシク教徒のダルワーンは街頭でも差別用語を投げ付けられ、ウェンディがそれに反発する。インドから会った事もない花嫁を迎えて落ち着かないダルワーン。それまで、アメリカ社会に打ち解ける努力もせず、伝統を重んじる生真面目さが彼を孤立させていた。堅物ダルワーンの言葉に、自虐ギャグで応えるウェンディ。対照的なふたりだったが、お互いに他者(周囲)への配慮に目覚め、誰も傷付けることなく、安全運転するように穏やかな気持ちで、新たな自分らしい人生を進んでいく。
50代半ばになってもエレガントな美しさで光を放つパトリシア・クラークソン。どんな小さな役でも存在感を示してきた彼女が、脚本に惚れ込んで自ら『エレジー』(‘08)のイサベル・コイシェ監督と主演のベン・キングズレーにアプローチして完成させたのが本作。激昂、絶望、悲嘆、反省、冷静、希望と、心情の変化を繊細に演じたパトリシアの魅力的な表情に目が離せなくなる。対するベン・キングズレーも、71歳とは思えない若々しい毅然とした姿勢は、他の男性とは違う落ち着いた魅力を発していた。
ベテラン二人が魅せる「過去に囚われず自分らしく生きるノウハウ」を、楽しみながら学べる、そんな逸品です♪
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://shiawase-mawarimichi.com/
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