原題 | BOYCHOIR |
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制作年・国 | 2014年 アメリカ |
上映時間 | 1時間43分 |
監督 | フランソワ・ジラール |
出演 | ダスティン・ホフマン,ギャレット・ウェアリング,キャシー・ベイツ,デブラ・ウィンガー,ジョジュ・ルーカス,ケヴィン・マクヘイル,エディ・イザード |
公開日、上映劇場 | 2015年9月11日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ(なんば、二条、西宮OS)、OSシネマズミント神戸 ほか全国ロードショー!! |
~“声”で人々が繋がって大きな和となる~
ボーイ・ソプラノは,少年が変声期前の限られた時間だけ天から授けられる清冽な歌声だ。12歳のステットは,自分の歌声の価値が分かっていなかった。生まれてからずっと母子家庭で育ち,反抗的で荒んだ生活をしている。母親を侮辱されると逆上し暴力を振るってしまう。孤独を抱えながらも,強い意思で自分を支えている反面,母親への愛着が一段と強い。ギャレット・ウェアリングが力強い存在感を見せ,幕開きから名作の予感がする。
母親が不慮の事故で亡くなる。父親は,妻や娘らに息子の存在を隠し続けているが,ステットを忘れたことはない。彼の澄み切った歌声が父親の心の奥に光を当て,その重大な決意を促す。父親の家庭の様子が繰り返し挿入され,そこに心の内面の微妙な変化が投影される。そして,2人の架け橋となるのが合唱の指導者カーヴェイだ。謹厳実直な人物だが,挫折した体験に根差す優しさを見せる。ステットの歌声は周りの人々をも変えていく。
起承転結のセオリーに従った展開だが,ステレオタイプの陳腐さはなく,オーソドックスな手堅さを感じさせる。自らの進むべき道に気付いたステットは,楽譜の読み方から学び始める。年末年始に帰る場所がなくても,一人で寮に残って練習する。彼がデヴォンの代役で脚光を浴びると,妬みから妨害を受ける。邪心のあるデヴォンの歌声は,人々の心に決して届かない。邪心のないステットの歌声は,録音を通しても人々の心に響いてくる。
音楽に対して敬意を払い,心から歌いたいと思うことで,崇高な美しさが生まれる。ストイックに努力することで得られる一瞬の輝きは,だからこそ人々を魅了する。監督は,登場人物の様々な感情を的確に描写し,ステットの輝きを頂点にまとめ上げる。彼の歌声が心に響き,均整のとれた世界が構築されるので,胸のすく思いがする。彼が歌声を極めた体験は,時間の流れの中でボーイ・ソプラノが失われた後も,心の豊かさとなって残る。
(河田 充規)
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