原題 | Danny Collins |
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制作年・国 | 2015年 アメリカ |
上映時間 | 1時間47分 |
監督 | ダン・フォーゲルマン |
出演 | アル・パチーノ、アネット・ベニング、ジェニファー・ガーナー、ボビー・カナベイル、クリストファー・プラマー他 |
公開日、上映劇場 | 2015年9月5日(土)~角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、シネ・リーブル梅田、MOVIX京都、9月26日(土)~シネ・リーブル神戸ほか、全国順次公開 |
~遅れて届いたジョン・レノンの手紙が、マンネリ化シンガーに“喝”!~
映画の冒頭、音楽好きにはたまらないLPレコードやプレーヤー、カセットデッキなどが出てくる。時代は1971年、ひとりの駈けだしミュージシャンがインタビューを受けている。彼の名はダニー・コリンズ。名声やお金を得るのは怖いと語っている。それから、43年後、ダニーは誰もが知っている有名なシンガーとなり、コンサートはチケット完売の大盛況。しかし、彼は人生にとことん退屈していた。そんな折、マネージャーが驚くべき“宝物”を彼のもとに持ってきた。それは、若き日のダニーのインタビュー記事を読んだジョン・レノンが、激励をこめてダニーに送った直筆の手紙。ダニーは自分の人生を変えようと決意するのだった…。
アル・パチーノが歌って踊る、しかも大観衆を前にしたそのライヴシーンは、実際にロサンゼルスのグリーク・シアターで行われたロックバンド・シカゴのコンサート休憩時間を利用して撮影されたものだそうで、さぞや観衆は驚き、また狂喜したことだろう。なんといってもアル・パチーノ、ミュージシャンに扮しても存在感はただものではない。それに、年を重ねたアネット・ベニングもイイ!有名スターに媚びず、自分というものをしっかり持っていて、知性とウィットにあふれる素敵なホテルのマネージャー役で登場する。パチーノとの掛け合いも面白い。ダニーが長年見捨ててきた息子との関係を一からやり直そうと奮闘し、その想いが叶えられるようなラストシーンはほのぼのと心を温めてくれる。
この映画は、イギリスのミュージシャン、スティーヴ・ティルストンの実話にインスパイアされたもので、レノンからの遅れてきた手紙も実在する。しかし、どうだろう。レノンの手紙を若い頃に受け取っていたとして、彼の人生は違うものになっていただろうか。私個人の考えとしては、富や名声は人を変えてしまう“魔物”であり、その魔物に惑わされず、長きにわたって変わらずにいるには、相当の覚悟と、相当の強さがなければならない。富や名声のまわりに人は寄ってくるが、ちやほやされる本人は人を見下すようになる。ところが、その富や名声を失ってしまったとたん、寄ってきたはずの人間は去っていく、それが世の常ではないか。
昔、ボブ・ディランは“ハングリーであること”の重要性を説いていたように思うが、物質的裕福に囲まれながら精神的にハングリーでいることはたやすいことではないのだ…ってことをいろいろ考えさせられる作品でもある。場面場面にぴたっと絶妙なタイミングで流れるジョン・レノンの楽曲にも耳を傾けて。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://deardanny.jp/
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