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『バケモノの子』

 
       

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作品データ
制作年・国 2015年 日本 
上映時間 1時間59分
監督 細田守
出演 声の出演:役所広司、宮﨑あおい、染谷将太、広瀬すず、山路和弘、宮野真守、山口勝平、長塚圭史、麻生久美子、黒木華、諸星すみれ、大野百花、津川雅彦、リリー・フランキー、大泉洋
公開日、上映劇場 2015年7月11日(土)~全国ロードショー
 

~親子以上の絆で結ばれるバケモノと人間の冒険活劇~

 
『バケモノの子』の英語タイトルは『THE BOY AND THE BEAST』。”美女と野獣”ならぬ、”
少年と野獣”だ。前者の野獣の正体は、姿を変えられた王子様だったが、後者は、正真正銘の野獣で、しかもかなり口は悪いが、腕っぷしだけは誰にも負けない。前作、『おおかみこどもの雨と雪』で、おおかみおとこと人間の女の子の恋、そして二人から生まれた子どもたちが成長するまでを描いた細田守監督は、さらにその世界観を深化させ、人間界とバケモノ界という共存するパラレルワールドを舞台に、壮大な冒険活劇を描いてみせた。別世界の住人であっても、時間をかけて通じ合い、師弟のような、また親子のような関係を築くようになる孤独な主人公たち。その修行ぶりや、彼らを取り巻くバケモノたちの冷やかしぶりなど、素晴らしい声優陣たちに命を吹き込まれたキャラクターが大暴れし、そして心を鷲掴みにするのだ。
 
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両親を事故で亡くし、居場所を亡くした少年(宮崎あおい)は、ある日、バケモノの熊徹(役所広司)に出会う。「オレと一緒に来るか?」と誘われた少年はバケモノ界【渋天街】に行き、九太という新しい名前を与えられる。悪友多々良(大泉洋)、百秋坊(リリー・フランキー)らに止められながらも、熊徹は九太を弟子にし、九太の修行の日々が始まった。ぶっきらぼうな熊徹としょっちゅう喧嘩をしながらも、次第に親子のような絆が芽生え、凛々しい青年に成長した九太(染谷将太)。人間界の渋谷に戻ったときに出会った高校生の楓(広瀬すず)から、新しい世界や可能性を教えられた九太は、人間界で生きていく道も模索しはじめるのだったが。・・・。
 
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まさに凸凹コンビ。身体は大きいが、単細胞で喧嘩早い怪力男の熊徹と、力は弱いが頭がキレ、情に流されない九太。最初は人間を弟子にすることに否定的だった多々良や、二人の心理を見抜く百秋坊と、バケモノ界で修行を続ける4人のエピソードは、まるで「孫悟空」の修行を見ているかのような冒険と奥義がある。一方、成長した九太に起こる思春期特有の感情や、人間界とバケモノ界とどちらで生きていくかに揺れる心は、親子のように親密だった二人に、結局は他人であるという現実を突きつけるのだ。
 
渋天街の古代もしくは中国風描写の細やかさや、動物をアレンジした個性豊かなバケモノたちの造詣も、オリジナルストーリーらしい想像力に溢れている。またクライマックスでは、人間の心の闇が引き起こす思わぬ事件から街が飲み込まれていくが、恐ろしいはずのシーンでも、美しさを秘めた描写はまさに細田マジックと言えよう。
 
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バケモノ界での熊徹、人間界での九太、それぞれの闘いに挑むとき、彼らは決して一人ぼっちではなかった。実の親が、我が子を温かく育てることが当たり前とは言えなくなってきた今、他人が親以上の愛情をかけて子どもを育てれば、子どもの中に愛は確実に宿る。そして、教えることで教えられ、共に成長するのだ。九太、熊徹の冒険の軌跡が描かれた『THE BOY AND THE BEAST』には、男同士の魂が響きあう絆が息づいていた。(江口由美)
 
 (C) 2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS
 

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