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『アリスのままで』

 
       

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作品データ
原題 Still Alice 
制作年・国 2014年 アメリカ 
上映時間 1時間41分
原作 原作:リサ・ジェノヴァ(「アリスのままで」キノブックス刊)
監督 監督・脚色:リチャード・グラツァー、ウォッシュ・ウェストモアランド
出演 ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン、クリステン・ステュアート、ケイト・ボスワース、ハンター・バリッシュ
公開日、上映劇場 2015年6月27日(土)~新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル梅田、/なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー
受賞歴 アカデミー賞主演女優賞受賞(ジュリアン・ムーア)

 

~生きた証ってなんだろう?
言葉や記憶を失っても、愛し慈しんできたものは消えない~

 

映画は、コロンビア大学で言語学の教授をしているアリス(ジュリアン・ムーア)の50歳の誕生祝いの席から始まる。夫(アレック・ボールドウィン)は有名な医学博士で、長女(ケイト・ボスワース)は優秀な弁護士、長男(ハンター・バリッシュ)も医者、ただ、この日も欠席の末っ子のリディア(クリテン・スチュアート)だけが進むべき道を決められず、アリスの心配の種だった。そんなある日、授業中突然言葉が出てこなくなった。また、日課にしているジョギングの途中、自分がどこにいるのかが分からなくなる。医者の診断では若年性アルツハイマー病だという。

alice-3.jpg次第に人の名前や顔が分からなくなり、自宅でもトイレの場所が分からず失禁したり、夜中に突然物さがしを始めたり、身だしなみにも無頓着になり、日常会話もおぼつかなくなる。聡明で美しく、良き母であり、良き妻であり、優秀な学者でもあったアリスが、突然崩壊していく。知識や記憶が消えていくだけではない、自力で生活できなくなるのだ。若いから進行も速い。自慢の優秀な子供たちも優しい夫も手をこまねいている中、一番遠ざかっていたリディアだけがアリスの傍に戻って来た。

alice-4.jpg突然の変調に「どうしたんだろう?」と焦りと恐怖でいっぱいになる。自分だったらそんな恐怖に打ち勝てるだろうか?アリスは病気を理解し、病気が進行してしまった未来の自分へメッセージを残す。アリスが愛した家族、情熱を注いできた仕事、何よりアリス自身の尊厳に満ちた生き方こそ、アリスとして生きた証。アリスに起きたことは他人事ではない。誰しも思い当たるフシがあり、共感することも多いはず。将来我が身に起こるかもしれない事態に、アリスが発信するメッセージは大きな力をなって私たちを支えてくれるにちがいない。

alice-5.jpgウォッシュ・ウェストモアランド監督とリチャード・グラツァー監督は、小説『アリスのままで』の映画化のオファーが来た時、「私たちは動きが止まってしまった」そうだ。そのテーマが、ALS(筋委縮性側索硬化症)を患い体調が悪化するリチャード・グラツァー監督に起きたこととあまりにも類似していたからだ。医者の診断を聴いた時のショックや、体が不自由になるにつれ襲ってくる恐怖。体は動くが思考力低下で自力で行動できないアルツハイマーに対し、体は動かなくなるが意識はしっかりしているALS。対称的に思えるが、自分が自分のままでいられなくなるのは同じことだ。


そこでリチャードは、最後の力を振り絞って、アリスの身に起きていく葛藤や焦燥、恐怖や悲しみに自らの体験を盛り込み、ウォッシュと共にこの映画を完成させた。アリスを演じたジュリアン・ムーアが、見事アカデミー賞主演女優賞を受賞。その嬉しい報せを受けた1週間後に、リチャードは63歳で息を引き取った。体中の筋肉が萎縮し生命を縮める難病ALSが進行する中、自らが生きた証を作品に込めるように。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://alice-movie.com/

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