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『ターナー、光に愛を求めて』

 
       

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作品データ
原題 Mr. Turner 
制作年・国 2014年 イギリス・フランス・ドイツ 
上映時間 2時間30分
監督 監督・脚本:マイク・リー  撮影:ディック・ポープ
出演 ティモシー・スポール、ポール・ジェッソン、ドロシー・アトキンソン、マリオン・ベイリー、レスリー・マンヴィル、ルース・シーン
公開日、上映劇場 2015年6月20日(土)~Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル梅田、京都シネマ、7月4日(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開

 

~太陽が物語る風景に魅せられたイギリスの巨匠、ターナーの実像に迫る~

 

19世紀初頭に活躍したイギリスの風景画家ターナー(ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー)。昨年日本でも大規模な《ターナー展》が開催され、若くして開花したターナーの才能を余すところなく満喫できる展示内容だった。その中に若い頃の自画像があった。繊細な美男子で、当時はさぞかしモテただろうなぁと思いきや、実際にはブ男だったとか!? 本作では、50歳位から76歳で亡くなるまでの晩年を描いているが、ブ男ゆえの女性への偏愛か、もしくは過保護な父親のせいなのか、ロイヤル・アカデミーでの確執などプライベートなエピソードが満載。さらに、ターナーが描く風景画の中にいるような鳥肌もののシーンも数多く登場し、ターナーが生きた時代へトリップして、ターナーの知られざる実像に迫る力作である。

turner-2.jpg監督は、市井の人々の悲喜交々を、鋭い洞察力と丁寧な演出で彩るマイク・リー監督。美男美女のスター俳優は使わず、一般人のような容姿の俳優を使って、人生の黄昏や悲哀を描き出す現代の天才監督である。今回、リー監督作の常連でもあるティモシー・スポールが、心の闇を抱えた天才画家の心象風景を全身全霊で体現し鬼気迫るものがある。ターナーのまわりの女性たちがまた年増のおばさんばかり。それぞれ個性的だが、晩年にようやく見つけた安らぎの場にふさわしい女性像は、まさに納得のキャラクターと言える。リー監督の精緻なキャラクター作りに注目して映画を見ると、さらに人間ドラマの面白さが実感できる。


turner-3.pngフランス革命やナポレオン旋風、産業革命と急速に進展していったターナーが生きた時代。ワイドスクリーンに展開されたような壮大な風景画は、居ながらにして時空を超えた別世界へとワープさせてくれる。特に、光が劇的な変化を見せる日の入りと日の出の描写はこの世のすべてをドラマチックに魅了する。光の変化を繊細に捉えた感性に加え、科学的論拠に基づいた遠近法や光の屈折や色のプリズムなど、ターナーのこだわりの技法も紹介される。
 

turner-4.png子供の頃から天才の誉れ高い息子に惜しみない愛情と教育の機会を与えたターナーの父親。精神病の母親の影響からか、女性へのアプローチが苦手なターナーは、二人の娘を産ませた女性がいたが、売れっ子画家だというのに養育費も出さなければ認知もしなかったという。父親と家政婦との3人暮らしで、夏の間は偽名で写生旅行へ出掛け、ロイヤル・アカデミーでの講義や展覧出品の選定にも関わり、イギリス美術界の重鎮でもあった。それでも心が満たされることはなく、ようやく晩年になって愛する女性と出会う。ターナーにとっては初めて心安らげる場だったに違いない。それまで光が照らす風景を神々しく描いてきたターナーだったが、晩年は抽象的な画風に変化していった。まるで無欲な精神性を光そのものに昇華させたように。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://www.cetera.co.jp/turner/

(C)Thin Man Films

 

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