原題 | Berthe Morisot |
---|---|
制作年・国 | 2012年 フランス |
上映時間 | 1時間45分 |
監督 | カロリーヌ・シャンプティエ |
出演 | マリーム・デルテリム、アリス・バトード、マリック・ジディ、ベランジェール・ボンヴォワザン、パトリック・デカン、フランソワ・デューアイデ |
公開日、上映劇場 | 2015年6月13日(土)~YEBISU GARDEN CINEMA、テアトル梅田、7月11日(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
~印象派の女流画家ベルト・モリゾの青春~
オルセー美術館で今でも人気の高いエドゥアール・マネの「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」という名画をご存じだろうか。日本で《オルセー美術館展》が開催された際にも展示され人気を博していたそうだ。そのモデルとなったベルト・モリゾが本作の主人公である。1874年、フランス画壇の伝統重視のサロンに対抗して開催された第1回印象派展に、モネ、ルノアール、ピサロ、シスレー、ドガ、セザンヌなどと共にベルト・モリゾの作品も出品された。本作は、マネとの関係を中心に、時代に翻弄されながらも絵画に情熱を注ぎ、一流の画家として自立したベルト・モリゾの若き日々を興味深く描いている。
ベルト・モリゾ(マリーヌ・デルテリム)は、県知事だった父親の転勤でパリ16区の高級住宅街パッシー地区(現在ではマルモッタン美術館や大使館が点在している)に住み、芸術に理解のある両親の影響で、二人の姉と弟と一緒に音楽や絵を習っていた。特にベルトの絵の才能は度々サロンに入選するほどで、二番目の姉のエドマ(アリス・バトード)と共に、いつの間にか結婚より情熱を注ぐ対象となっていた。ベルト27歳の時、エドマとルーブル美術館で模写をしている際マネに声を掛けられる。当時マネは裸婦像「オランピア」発表以来スキャンダラスな画家として見られていたが、二人にとっては才能豊かな魅力的な男性に思えた。
その後ベルトはマネの依頼で「バルコニー」のモデルとなる。アトリエへは常にエドマか母親が付き添っていた。当時は中流以上の女性は付き添いなしでは外出できなかったらしい。マネには妻子がいたが、上流階級の二人は家族ぐるみの交際をして、ベルトは次第に画家としてマネの影響を受けるようになる。1870年普仏戦争が勃発、マネをはじめ画家仲間も巻き込まれ、パリが占領されたり、食糧難になったり、屋敷内に兵士を受け入れたりと大きな時代の変動を目の当たりにする。ベルトの作風もより自然をモチーフにした柔和な描写が多くなり、やがて印象派やバルビゾン派の画家たちを支援していた有名な画商に認められるようになる。
ベルトとマネの関係は、師弟という訳でもなく、男女の関係という訳でもなかったようだ。だが、「女性の幸せは結婚!」と結婚を迫る両親と違い、お互いの才能を認め合い対等に芸術論を交わし、インスピレーションを掻き立てられるかけがえのない存在であったことは確かだろう。ベルトは33歳でマネの弟ウジェーヌと結婚し、37歳で娘を産んでいる。まだ女性に職業の選択や財産管理の権利が認められず、女性は男性の庇護の下で生きていくしかなかった時代、ベルトは画家として社会に認められた稀有な人物だったといえる。それには、彼女がブルジョア出身で、マネの推薦があったことも大きく影響していたのだろう。フェミニズムのさきがけともいえるようなベルト・モリゾは、現代女性のような高い意識を持ち、独自の強い意志を貫き、近代フランス絵画に貢献した人物でもあったということを、この映画を通じて初めて知ることになる。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://morisot-movie.com/
(C)K'ien Productions – 2012