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『しあわせはどこにある』

 
       

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作品データ
原題 Hector and the Search for Happiness  
制作年・国 2014年 イギリス・ドイツ・カナダ・南アフリカ合作
上映時間 1時間59分
原作 フランソワ・ルロール「幸福はどこにある―精神科医ヘクトールの旅」(NHK出版・刊)
監督 監督・脚本:ピーター・チェルソム 共同脚本:マリア・フォン・ヘランド、ティンカー・リンジー
出演 サイモン・ペック、トニ・コレット、クリストファー・プラマー、ロザムンド・パイク、ジャン・レノ、ヴェロニカ・フェレ、ステラン・スカルスガルト、バリー・アトスマ、ミン・チャオ、伊川東吾
公開日、上映劇場 2015年6月13日(土)~シネマライズ、新宿シネマカリテ、梅田ブルク7、シネマート心斎橋、6月27日(土)~京都シネマ、シネ・リーブル神戸 にてロードショー

 

~“幸せ”について考えよう! 旅から学ぶ身近な幸せ~

 

「何が不満やねん?」と言いたくなるような主人公のへクター(サイモン・ペック)は、美人できれい好きで聡明な恋人クララ(ロザムンド・パイク)とテムズ川を見渡せる瀟洒なアパートメントで暮らしている。食事から服装に至るまでクララにセンス良く整えてもらって何不自由ないように思えるが、実は、精神科医のヘクターは患者たちの愁訴をまともに聴けなくなっていた。病気の原因や要望が整理できずに自分自身を見失っていたのだ。そこで、旅に出て、「幸せ探し」を始めることに。

siawase-2.jpg「そこまでせんと解らんか?」と言いたくなるようなヘクターの旅は、中国・チベット・アフリカ・アメリカと、多くの出会いから得る格言あり、ロマンスあり、絶体絶命の危機あり、それはそれはのんきな幸せ探しからは程遠い厳しい現状に直面することになる。旅することで自分の可能性を現実のものとして成長していったベン・ステイラー主演の『LIFE!ライフ』を彷彿させる部分もあるが、情報過多、機械化、ストレスの有無にかかわらず国や人種を超えて普遍的な問題として共感する部分も多いように思う。「贅沢な悩みだ」と一蹴されればそれまでだが――。

siawase-3.jpg「大人になりきれない?」ヘクターが学生の頃真剣に愛した元カノのアグネス(トニ・コレット)を訪ねるシーンがいい。新しい家族にも仕事にも恵まれ多忙な日々を送りながらも、それこそ“幸せに”暮らしているアグネスは穏やかな落ち着きを見せていた。愛する家族の声に耳を傾け、好きな研究に励み、過度な欲を持たず、地に足の着いた生き方を平凡に送っているだけなのだ。そこでヘクターはクララの存在の大きさに気付く。それはクララにとっても同様のことで、自分の不満ばかりをヘクターにぶつけていたことを反省する。

siawase-4.jpg「幸せって何?」幾多の困難を経て知る幸せ、お金や権力では得られない幸せ、ありのままの自分で平穏に暮せる幸せ、尊重し合える存在がいる幸せ、幸せの感じ方は人それぞれだろうが、「足りるを知る」ことも幸せへの近道のような気がする。


「旅に出よう!」自分自身を見つめるのに旅はいい機会となる。ビジネスクラスで移動できるヘクターと違い小市民にとって海外旅行は高価なもの。その高価な旅から帰宅して思う事は、「やっぱ我が家が一番!」。狭くて汚い家でも自宅でくつろげるのが一番幸せだと思うから皮肉なものだ。それでも、日常から離れた別世界で過ごす時間は生活の潤滑油となり、リフレッシュできるのは確か。ああ、またどこかへ行きたくなった……。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://shiawase-movie.com/

©2014 Egoli Tossell Film, Co-Produktionsgesellschaft "Hector 1" GmbH &Co. KG, Happiness Productions Inc., Wild Bunch Germany, Construction Film.

 

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