原題 | MARIE HEURTIN |
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制作年・国 | 2014年 フランス |
上映時間 | 1時間34分 |
監督 | ジャン=ピエール・アメリス |
出演 | イザベル・カレ、アリアーナ・リヴォアール、ブリジット・カティヨン |
公開日、上映劇場 | 2015年6月6日(土)~シネ・リーブル梅田、6月13日(土)~シネ・リーブル神戸、7月4日(土)~ 京都シネマ ほか全国順次公開 |
~“魂の娘”に、優しさを、愛することを、生きることを教えた女性~
映画は視覚と聴覚で認識するもの。直接、触感を伝えることはできない。でもこの映画を観終わった時、私たちは“触れる”ことの歓びを知る。人の顔に触れる、ピアノの鍵盤に、弦に触れる、熟れたトマトに触れる、人のぬくもりのあたたかさに触れる。指で、掌で、世界を知覚していくことのすばらしさを知る。そして、生きていることの喜びを教えられる…。
19世紀、フランス西部の自然豊かな修道院に、生まれつき目も耳も不自由な少女マリーがやってくる。修道女マルグリットは、生まれてから何もしつけられず、野生児のようなマリーに強く心ひかれ、言葉を教え、闇と沈黙の世界から連れ出すことが自分の使命だと感じる。着替えること、髪を梳くこと、風呂に入ること、フォークを使って食べることといった日常の生活習慣を、嫌がるマリー相手に取っ組み合いやつかみあいをしながら、体当たりで教える苦難の日々が始まる…。ともに実在した二人の女性の出会いと別れまでを描いた真実の物語。
カメラがすばらしい。冒頭、風や光を腕全体で感じるかのように、馬車に乗せられたマリーが、空に向かって腕を高く伸ばすシーンから、引きつけられる。カメラは、まるで、私たちが、その空気に触れているかのように、繊細に光と影をとらえ、修道院の草原や樹々の葉、木洩れ日、人の肌が、その息遣い、柔らかさまでが伝わってくるほどに美しい。
物には名前があること、言葉を使えば他人と心を通わせ、自分の気持ちを伝えられること、手話で言葉を表せることを、諦めることなく、献身的に教え続けるマルグリットをイザベル・カレが好演。マリー役の新人アリアーナ・リヴォアールは、自身も耳が不自由で、監督に見出された新人。次々と発見していく時の目の輝きや、豊かな表情に釘付けになる。あたたかい目でマルグリットを見守る、少しお茶目な学院長も魅力的。
不治の病を抱え、余命わずかなマルグリットは、マリーに、人間がいつかは死ぬ生き物であることをも教える。全身全霊でぶつかり合い、マリーの魂の叫びを受け止め、光の世界へと導いていくマルグリットの姿に深く心を揺さぶられる。そんなマルグリットの思いがマリーに受け継がれていくと感じるラストは圧巻。一人でも多くの人に観てほしい。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒http://www.kiseki-movie.jp/
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