制作年・国 | 2015年 日本 |
---|---|
上映時間 | 2時間19分 |
原作 | 和久井健『新宿スワン』講談社「ヤングマガジン」刊 |
監督 | 園子温 |
出演 | 綾野剛、山田孝之、沢尻エリカ、金子ノブアキ、深水元基、村上淳、真野恵里菜、安田顕/山田優、豊原功補、吉田綱太郎/伊勢谷友介他 |
公開日、上映劇場 | 2015年5月30日(土)~TOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ二条 他全国ロードショー |
~破天荒キャラの綾野剛が新鮮!喧嘩上等の歌舞伎町スカウトバトル~
これ以上ない濃いキャスティングに、監督が『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』などの園子温とくれば、期待が高まらないはずがない。『そこのみにて光輝く』でおおさかシネマフェスティバル2015主演男優賞を受賞した綾野剛主演最新作は、和久井健のベストセラー漫画を映画化した歌舞伎町スカウト物語だ。今までで一番破天荒な役を、人相が変わるぐらい表情筋を使いまくり、全力で熱演。裏社会ものの典型的な登場人物たちの中で、トレードマークの金髪同様、輝きを放っている。男たちの野心がぶつかりあうバトルや、風俗嬢との淡い恋などハードもソフトも園子温流に料理した歌舞伎町版『クローズZERO』。その熱量はハンパない。
人生のどん底にいた龍彦(綾野剛)は、新宿・歌舞伎町で名うてのスカウトマン真虎(伊勢谷友介)に誘われ、スカウト稼業を始める。真虎に仕込まれながら「俺がスカウトした女の子には必ず幸せだって言わせます!」と意気込む龍彦だが、ライバルスカウト会社の秀吉(山田孝之)に目を付けられてしまう。日々歌舞伎町を行きかう女たちに声をかける龍彦は、ある日風俗嬢アゲハ(沢尻エリカ)と運命的な出会いを果たし、休みなく働かされているアゲハをなんとか助けようとするのだったが・・・。
真虎や龍彦が所属するスカウト会社バーストと秀吉が所属する会社、ハーレムとの勢力争いや内部抗争、他を出し抜いてでものし上がろうとする秀吉の野心などが劇画さながらのタッチで描写。ヒールな役の山田孝之、弟分思いのクールな戦略家役の伊勢谷友介など、破天荒キャラを受けて立つ布陣も万全で、歌舞伎町で様々な試練を経ながら成長していく龍彦をどこまでもアツく演じる綾野剛が、とても新鮮に映る。度々登場する歌舞伎町でのスカウトシーンは、龍彦の空振りが何パターンもあるのも笑えれば、それでもめげない打たれ強さ(もしくは能天気ぶり!?)をみせるし、スカウトした女の子たちのフォローをする神対応ぶりは、いい人すぎるぐらい。主人公龍彦の周りは、どこか笑いとささやかな幸せがあるのだ。
一方、風俗業で働く女たちの闇も描かれ、リストカット癖のある女性や、クスリ漬けで働かされるアゲハなど、龍彦の思いとは裏腹に「幸せだとは言えない」人生に転じていく。園子温監督は、沢尻エリカ演じるアゲハの儚さと、“王子様”を信じる純粋さを、ファンタジーのような空気感で表現し、龍彦と裸足のアゲハがジャンプしながら街を駆け抜ける、爽やかすぎるシーンまで作り上げた。また、男たちの野望が渦巻く中で、歌舞伎町全体を見通し、時には龍彦を助け、時には傲慢な男たちに風格のある喝を入れるクラブママ、涼子(山田優)の存在感も光る。過激に見えるが、義理と人情、男と女、そして歌舞伎町の喜怒哀楽がぎゅっと詰まった一作だ。(江口由美)
公式サイト⇒http://shinjuku-swan.jp/
(C) 2015「新宿スワン」製作委員会