制作年・国 | 2015年 日本 |
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上映時間 | 1時間46分 |
監督 | 福田雄一 |
出演 | 菅田将暉、城田優、若葉竜也、吉岡里帆、松下優也、柿澤勇人、新井浩文、ムロツヨシ、佐藤二朗他 |
公開日、上映劇場 | 2015年5月16日(土)~梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸他全国順次公開 |
~主役以外は全部変キャラ!?絶体絶命ホスト、涙と笑いの12時間~
イケメンはどんな格好をしても似合うなとつくづく思う。おおさかシネマフェスティバル2015で助演男優賞(『そこのみにて光輝く』他)を受賞、今年も『チョコリエッタ』、『暗殺教室』と今や若手実力派俳優筆頭の菅田将暉が、本作ではなんとアフロヘアに挑戦しているのだ。しかも、この風貌に、指名ゼロの最下位ホストという設定でありながら、実は登場人物の中で一番まともなキャラクターなのも面白い。『HK╱変態仮面』福田雄一監督最新作は、主役以外は変人揃いの“笑いすぎたらごめんなさい”コメディーだ。
品川のあまりぱっとしないホストクラブ「明烏 あけがらす」。借金返済で追い込まれていた最下位ホストのナオキ(菅田将暉)は、お金が工面できたことを祝い、同僚ホストたちと飲み明かすが、翌朝にお金が消えていた。店の誰に聞いても知らないと言われ、お金ができたのは夢だったらしいと悟ったナオキだったが、返済期限は残り12時間と迫っていた。返さなければ東京湾に沈むと脅されたナオキの運命は!?
ホストクラブのバックルームというワンシチュエーションで、借金返済のメドが立たずに焦るナオキと、入れ代わり立ち代りやってくる人たちとのやり取りによって成立している本作。何といっても肝は、キャラの濃い同僚ホストやナオキを取り巻く人たちと、ナオキとの会話合戦だ。王子様イメージが強い城田優が、チョー軽すぎるホストで「チッス、チーッス!」を連発しながら弾けまくっているのも驚くし、紅一点の吉岡里帆の変貌ぶりも大したもの。見た目は極悪非道なのに、あまりにも素直に言うことを信じるギャップにふっと笑わされる新井浩文演じる借金取りも、ちょいキャラなのに思い出して笑ってしまう。福田作品の風神雷神、ムロツヨシ、佐藤二朗の冴えぶりは言うに及ばず。特にナオキの父役の佐藤二朗が、これでもかというぐらい田中邦衛キャラでぐいぐい押してくるのは圧巻だ。
話をナオキに転じると、冒頭でお金が無くなったことを知らず、ナオキが借金返済の予行演習をしているシーンは長回しで、まさに菅田将暉の一人コメディーといういきなりオイシイ見せ場が用意されている。キレのいい変身ポーズまで登場し、仮面ライダーでデビュー当時からのファンなら感動必須だ。どんでん返しに次ぐどんでん返しで、一喜一憂しながら死を覚悟するナオキと、他人事のようにあっけらかんとしている周りとのギャップには、実は深い意味もあったりする闇社会コメディー。関西人の私としては、小さい頃から慣れ親しんだ吉本新喜劇に通じる笑いが、なんとも心地よかった。
(江口由美)