原題 | PRIDE |
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制作年・国 | 2014年 イギリス |
上映時間 | 2時間1分 |
監督 | マシュー・ウォーチャス |
出演 | ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、ドミニク・ウェスト、アンドリュー・スコット、ジョージ・マッケイ |
公開日、上映劇場 | 2015年4月25日(土)~シネ・リーブル梅田、5月2日(土)〜京都シネマ、5月23日(土)〜シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
~偏見から解き放たれ、手を携えて~
他人と違ったこと、新しいことをするには勇気が要る。イギリスの片田舎の炭鉱町の人々が、ロンドンのゲイやレズの若者たちと交流するなんて、同性愛者への偏見と差別がまだまだ激しかった80年代においては、革新的なこと。田舎町の主婦や炭鉱で働く男たちが、都会の若者たちと、年齢を超えて友情を育んでいく姿はまさに爽快。これが、実話に基づく物語というから驚きだ。イギリスの炭鉱を舞台にした名画といえば、『ブラス!』(1996年)、『リトル・ダンサー』(2000年)に、元気の出る本作が加わった。
1984年、サッチャー政権の炭鉱閉鎖案に反対して大規模なストライキを続け、警察の介入にも屈しない労働者たちの姿をテレビで観て、感銘を受けた青年マークは、仲間に呼びかけ、“LGSM(炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会)”を立ち上げる。しかし、せっかく集めた募金も、ゲイと聞いただけで、どこからも断られる。ちょっとした勘違いから、ウェールズ奥地の小さな炭鉱町ディライスの炭鉱組合が寄付を受け入れてくれる。多額の寄付のお礼に、マークたちLGSMのメンバーは町に招待されるが、炭鉱の役員たちとは異なり、町中の人々の視線は冷ややかだった…。
マークたちと仲良くなっていく、ディライスの住民たちがいい。LGSMの感謝パーティの委員長役のイメルダ・スタウントンは、自分の考えを貫く、貫禄たっぷりの地元のおばちゃんを好演、さすがの存在感を発揮する。ビル・ナイ、パディ・コンシダインと、皆、個性豊かで、頼もしい。ゲイであろうとなかろうと、しょせんは人と人との関係。互いに信頼できる相手だとわかれば、手を取りあえるはず。世間の偏見が強く、小さな村社会であるほど、自分の信じるままに行動することは難しい。役員たちが偏見を乗りこえ、町の住民たちの警戒心や恐怖心を解き放ち、他の炭鉱からの圧力にも屈することなく、楽しく明るく、ユーモアいっぱいに、ロンドンの若者たちと友情を深めていく姿がすがすがしい。ゲイのカップルに「どっちが家事をするの?」と無邪気に尋ねるおばちゃんたちの可愛らしいこと。ゲイの青年が、町の人々の目前でダンスを披露するシーンには圧倒される。
LGSMのメンバーの一人、両親に秘密で参加した大学生ジョーが、自分で考え決断していくようになる成長ぶりも描かれ、まわりの仲間たちの支えが温かい。炭鉱町に住む主婦の女性が、交流を通して自立していく姿も心強い。
カルチャー・クラブ、ザ・スミスと80年代の音楽をふんだんに取り入れつつ、サッチャー政権がゲイへの弾圧を続ける中、エイズについての情報不足が、町の人たちの恐怖や警戒を強めていた社会背景も描かれる。だからこそ、最後のパレードのシーンに胸熱くなる。ユーモアあふれる楽しい仕上がりが見事。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒http://www.cetera.co.jp/pride/
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