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『マジック・イン・ムーンライト』

 
       

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作品データ
原題 Magic in the Moonlight  
制作年・国 アメリカ・イギリス
上映時間 1時間38分
監督 ウディ・アレン
出演 コリン・ファース、エマ・ストーン、アイリーン・アトキンス、マーシャ・ゲイ・ハーデン
公開日、上映劇場 2015年4月11日(土)~Bunkamuraル・シネマ、新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー

 

~人気マジシャンがハマったトリックなしの恋のマジック~

 

毎年新作を発表している御年79歳のウディ・アレン。年を追うごとに大人のユーモアセンスが磨かれるようなシャレた作品で私たちを楽しませてくれる。今回は、1928年の南仏の高級リゾート地が舞台。陽光ふりそそぐ下で高名なマジシャンの身に降りかかる予期せぬ出来事を通して、人間社会のマジックとトリックのない大切な何かを教えてくれる。


majic-5.jpg主演は『英国王のスピーチ』や『シングルマン』などで堅物紳士のイメージが強いコリン・ファース。『アナザー・カントリー』でのデビュー以来、ヒュー・グラントやルパート・エヴェレット、ジェームス・ウェルビーらと共に〈初代イギリス美男子ブーム〉を作ったひとりで、ラブコメ『ブリジット・ジョーンズの日記』ではそのゴージャスな魅力で世界中の女性を魅了した。54歳の今でもタキシード姿がセクシーな彼が 、ウディ・アレンが仕掛ける一大マジックショーに登場して、果たしてどう化けるか?


majic-4.jpg共演は、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたエマ・ストーン。彼女のはじけるような若いパッションと、1920年代のエレガンスな高級リゾートファッションにもご注目。他にも、絶対騙されそうにない『アニマル・キングダム』のジャッキー・ウィーバーや、いかにもいわくありげなマーシャ・ゲイ・ハーデンなど、ベテラン勢のサポートもドラマに深みを出している。


 【STORY】
1928年。中国人の恰好をして瞬間移動のイリュージョンで人気を博していた天才マジシャンのスタンリー・クロフォード(コリン・ファース)は、幼なじみのハワード(サイモン・マクバーニー)の依頼で、南仏のリゾート地へやってくる。ある資産家を騙そうとしているインチキ占い師の化けの皮を剥いでほしいという。マジシャンなのに人を騙すことを許せない性格のスタンリーは、婚約者との旅行をパスしてまでもこの依頼を受ける。


majic-2.jpg貿易商に成りすまして別荘へやってきたスタンリーだったが、問題の占い師ソフィ・ベイカー(エマ・ストーン)に会って、予想外に若くて魅力的な彼女に戸惑いを隠せない。彼が中国名で活躍していることも言い当てられ、降霊術でもそのトリックを見破れず、すっかり彼女の霊能力を信じてしまう。さらに、ソフィの車でプロヴァンスに住む叔母の家へ行った際にも叔母の若かりし頃の悲恋を見抜いて、増々彼女への信頼を高めていく。と同時に、唯我独尊的生き方をしてきた高慢なスタンリーが、ソフィの能力に対し驚きと感動を隠せず、子供のように新鮮な喜びで高揚していく。素直でなかったスタンリーのポジティブな変化は婚約者や叔母の目にも明らかで、それがとんでもない結末へと進展していく。


それにしても、ウディ・アレンの精力的な活動の源は何だろうといつも不思議に思う。どうやら、彼の稀有の記憶力に加え、彼自身の不可解さや強い好奇心や人間社会の矛盾を鋭く見抜く洞察力にあるようだ。その皮肉めいた見方が、パリでは理想の時代を求めてタイムスリップさせたり、ローマでは夢の実現と平凡な幸せをミラクルに活写したり、サンフランシスコでは完璧な女性の虚栄を辛辣に表現したりと、様々な国を舞台に様々な人々の悲喜こもごもをコミカルに描写して、ハズレがない。84歳で『アメリカン・スナイパー』を監督したクリント・イーストウッドといい、ウディ・アレンといい、老いて益々冴えわたる映画力にこれからも目が離せない。

(河田 真喜子)

 公式サイト⇒ http://www.magicinmoonlight.jp/

Photo: Jack English (C) 2014 Gravier Productions, Inc.

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