映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『ソロモンの偽証 前篇・事件』

 
       

soromon1-550.jpg

       
作品データ
制作年・国 2015年 日本 
上映時間 2時間1分
原作 宮部みゆき『ソロモンの偽証』新潮文庫刊
監督 成島出 
出演 藤野涼子、板垣瑞生、石井杏奈、清水尋也、富田望生、前田航基、望月歩、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、黒木華、田畑智子、津川雅彦、余貴美子、松重豊、小日向文世、尾野真千子他
公開日、上映劇場 2015年3月7日(土)~丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、OSシネマズ神戸ハーバーランド、MOVIXあまがさき、TOHOシネマズ西宮OS、MOVIX京都他全国ロードショー
 

~中学生たちが立ち上がる!嘘だらけの大人と決別、学校内裁判を開くまで~

 

soromon1-2.jpg

宮部みゆきのベストセラーにして、中学校での転落死に端を発した壮大なミステリー『ソロモンの偽証』を、『八日目の蝉』、『孤高のメス』の成島出監督が前後篇の2部作で映画化。舞台となる時代は90年代前半だが、昨今の痛ましい青少年による殺人事件を目の当たりにする度、時代は変われど中高生の深い心の闇や、真実に辿りつくことの難しさを痛感する。そして、学校による事実の隠ぺい工作や、マスコミの偏った取材による世論の扇動などにより、関係のない人が疑われ、汚名を着せられ生涯ぬぐえないほどの傷を負ってしまうのだ。だが、そんな大人の事情に反旗を翻すべく、同級生のクラスメイトが立ち上がる。前篇は、自らの力で真実を見つけ出そうと奔走する中学生たちのまさに「革命前夜」までが、ひたむきに、そして緊迫感たっぷりに描かれている。
 
 

soromon1-3.jpg

90年クリスマスの朝、藤野涼子(藤野涼子)は雪に覆われた中学校の校庭で、同級生の柏木卓也の遺体を発見する。警察は早々と自殺と断定し、捜査を打ち切る中、涼子や校長に匿名の「本当は殺された」と書かれた告白状が届く。また破られた告発状がマスコミに届いたことで、学校の隠ぺい体質を巡る取材攻勢が激しさを増し、破って破棄したとされる担任の森内恵美子(黒木華)にも追及の手が及ぶ。更に、男子のイジメを受けていた三宅樹里(石井杏奈)の友人も交通事故で亡くなり、学内は騒然としてしまう。雪に覆われた中学校の校庭で柏木卓也という14歳の生徒が転落死してしまう。警官の父剛(佐々木蔵之介)から再捜査の可能性は低いと聞かされた涼子は、学校内裁判を行うことを決意し、クラスメイトや学校に打診を始める。裁判の中心メンバーに亡くなった柏木の他校生の友人、神原和彦(板垣瑞生)も加わり、容疑者扱いされている問題児、大出利次(清水尋也)に参加を要請するのだったが…。
 
 

soromon1-4.jpg

登場する中学生たちは全員オーディションで選び抜かれた新鋭ぞろい。90年代前半、そこにいた中学生がそのまま見事に再現されている。思春期の危うさや大人への疑念、真実を探求するひたむきさなどが、役と同名でデビューを果たす藤野涼子をはじめとする演者たちからにじみ出ている。「まえだまえだ」として漫才師、俳優と小さい頃から活躍していた前田航基もすっかり中学生のお兄ちゃんとなり、同級生の一人として名脇役ぶりを発揮。一方、原石のような彼らをフォローするベテラン勢が中学生たちの両親や先生役で登場し、生徒たちの家庭での様子もリアルに描写。物語をより説得力のあるものとしている。中でも、友人を交通事故で亡くし、引きこもる樹里の母を演じる永作博美が出色。80年代から90年代前半にかけてアイドルとして活躍していた永作が、当時流行のソバージュロングヘアで、ファンキーな母親を演じ、重たくなりがちな作品の空気をガラリと変える。
 
 

soromon1-5.jpg

不可解な中学生の転落死をきっかけに、様々な思惑や疑念が浮かび上がり、嘘に翻弄されるミステリーは、子どもも大人も巻き込みながら大きなうねりとなって、後篇・裁判に繋がっていく。まだ何も明らかにされていないが、ただこのうねりを体感するだけでも、前代未聞の学校裁判への期待が大きく膨らむのだ。どこかで手招きしている真実に辿りつくまで、どんな苦難があろうとも立ち向かっていく涼子らの「正義」を最後まで見届けたい。
(江口由美)
 

soromon1-6.jpg

公式サイト⇒http://solomon-movie.jp/
(C) 2015「ソロモンの偽証」製作委員会

カテゴリ

月別 アーカイブ