原題 | Back on Track(SEIN LETZTES RENNEN/BACK ON TRACK ) |
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制作年・国 | 2013年 ドイツ |
上映時間 | 1時間45分 |
監督 | 監督・脚本:キリアン・リートホーフ |
出演 | ディーター・ハラーフォルデン、ターチャ・サイブト、ハイケ・マカッシュ、フレデリック・ラウ、カトリーン・ザース |
公開日、上映劇場 | 2015年3月21日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、 3月28日(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
~皆の力をもらって走りつづけること~
好きなことに果敢に挑戦する姿は、幾つになっても、まわりの者に大きな勇気と元気を与えてくれる。かつてオリンピックで優勝も果たした往年のマラソンランナーのパウル。気ままな隠居生活を送っていたが、妻が体調を崩し、老人ホームに入る。木工細工や合唱など、決まりきったレクリエーションが性に合わないパウルは一念発起。ベルリン・マラソン出場を決意する。“終の棲家”として入所した老人ばかりの静かな施設で、ひとり庭を元気にランニングするパウルに、施設のスタッフ達は困惑。果たしてパウルは無事、マラソンに出場できるのか…。
パウルを演じるのは、ドイツの国民的喜劇俳優のディーター・ハラーフォルデン。お茶目な表情で観客を魅了する。妻を演じるターチャ・サイブトの温厚で優しげな微笑みとたたずまいがすてきだ。70歳を超えての夫の無茶な試みに最初は反対するが、本気さがわかると、病の身を押して、タイムを計り声援を送る。夫婦愛はこの映画のテーマの一つ。「ふたりは風と海。いつもいっしょ」と常々妻に語りかけるパウル。互いが互いにとって、かけがえのない存在。「立ち止まらないで」という妻の言葉がパウルを勇気づける。
入所している施設の老人たちが、皆、個性的で楽しい。はじめは、パウルの無謀な挑戦に呆れていたが、いつしか応援団をつくり、老人たちの中にも絆ができていくのが楽しい。老人たちもまた、夢中になって応援し、自分たちの夢を託すことで、生き生きと笑顔を取り戻していく。1956年メルボルン・オリンピックで活躍したパウルが、第二次大戦敗戦後のドイツ国民に希望をもたらしたことを覚えている老人たち。数十年後。今度は、施設の仲間の老人たちがパウルに力を与え、皆の声援を受けたパウルがゴールを目指して走るという脚本が秀逸。実際のベルリン・マラソンを撮影した映像の臨場感が物語を盛り上げる。
自分の人生は自分一人で生きるしかない。でも、一人では生きられない。家族や仲間やまわりの皆の愛が知らず知らず自分を支えていることに気づかされる。マラソンも同じ。手足を動かし、一歩ずつ走るのは自分。でも、皆の思いが、声援が、確実に自分の力を引き出し、後押ししてくれる…。春間近な3月、心あたたまり、勇気づけられるお薦めの一本。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒http://hidamarihausu.com/
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