原題 | BiRDMAN OR (THE UNEXPECTED ViRTUE OF iGNORANCE) |
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制作年・国 | 2014年 アメリカ |
上映時間 | 2時間 |
監督 | 監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ 、撮影:エマニュエル・ルベツキ、ドラム・スコア:アントニオ・サンチェス |
出演 | マイケル・キートン、ザック・ガリフィナーキス、エドワード・ノートン、アンドレア・ライズブロー、エイミー・ライアン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ、リンゼイ・ダンカン他 |
公開日、上映劇場 | 2015年4月10日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、MOVIX京都、ほか全国ロードショー |
~過去の栄光を背負った映画俳優の一発逆転はなるか?~
世界的に大ヒットした映画『バードマン』の主役を務めたリーガンだが、それも昔日の栄光に過ぎず、今はどん底状況。俳優としては“あの人は今”的な忘れられた有名人に過ぎず、妻とは離婚、娘は薬物依存、資産と呼べるものも尽きて……。これを何とかしようと、彼はレイモンド・カーヴァーの短編を自身で脚色、演出と主演も兼ねてブロードウェイの舞台に立とうとしていた。ところが、共演者が怪我で降板、代役が見つかったのはいいが、リーガンとの相性はとんでもなく悪いことが判明する。舞台の初日が迫るなか、リーガンの背中に張り付くような“バードマン”の皮肉な声が、リーガンをますます混乱させていく。
マイケル・キートン主演でこのタイトルとなれば、『バットマン』の連想は必至で、リーガンにささやく“バードマン”の声はリーガン自身の心の声であり、そういうスーパーヒーローへのアイロニーを込めているのだろうか。思わずくすっと笑ってしまうブラックなジョークがあちこちに散りばめられている。女性演劇評論家からは、映画人に対する毒のある言葉さえ放たれるのである。
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督といえば、わたし的に最も印象深かったのは、9.11に思いを捧げたオムニバス映画『セプテンバー11』だ。彼は、世界貿易センタービルから飛び降りる人の瞬間的な映像と、声、音、文字だけで作品を作った。それはあまりに痛ましく、衝撃的であった。本作でも、意表を突くようなアイデアは多々盛り込まれている。全編1カットかと思わせるような映像の作り方、現実と虚構の境界を自由にすり抜ける語り口。配役も実力派を揃えた。
しかしながら、監督が“真に表現したかったこと”がどうもあまり伝わってこない。例えるならば、お醤油やみりんやお酒で仕上げたけれど、出しを取るのを忘れて作った煮物の味だ。それでも、本年アカデミー賞の作品賞に輝いた。アメリカ人にはよくわかるけれど、日本人にはイマイチ理解しづらい何かが隠れているのだろうかとも思ったりするのだけれど。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://www.foxmovies-jp.com/birdman
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