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『唐山大地震』

 
       

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作品データ
原題 唐山大地震 AFTERSHOCK 
制作年・国 2010年 中国
上映時間 2時間15分
原作 「唐山大地震」チャン・リン(角川文庫刊)
監督 フォン・シャオガン(『女帝[エンペラー]』『狙った恋の落とし方』『戦場のレクイエム』)          エンディング曲:フェイ・ウォン「般若心経」
出演 シュイ・ファン(母親)、チャン・チンチュー(娘)、リー・チェン(息子)、チェン・ダオミン(養父)
公開日、上映劇場 2015年3月14日(土)~東劇、塚口サンサン劇場、3月16日(月)~シネ・ヌーヴォ、布施ラインシネマ ほか全国ロードショー

 

~悲しみを超えて…深い愛が心に迫る~

 

人は誰しも多かれ少なかれ悲しみを背負っている。でも、震災で一瞬のうちに、かけがえのない家族を喪ってしまった人の悲しみは、はかり知れない。1976年7月、河北省唐山市を襲い、24万人の死者、16万人の重傷者を出した唐山大地震。震災でばらばらになった家族の別れと再会を描いたヒューマン・ドラマ。


touzan-2.jpg地震で愛する夫の命を奪われた母。倒壊した建物の下に埋もれた双子の姉弟のうちどちらかしか助けられないと迫られ、「息子を…」と泣きながら言う。その声は、瓦礫の下の幼い娘の耳にも届いていた…。女手ひとつで息子を育てながら、夫を喪った悲しみと娘を死に追いやった罪悪感に苛まれ続けた母。一方、娘は、奇跡的に息を吹き返し、養父母に引き取られ、大切に育てられる。互いの生存を知ることなく、遠く離れて生きてきた家族の姿が淡々と描かれ、母、娘、息子と、それぞれの生き様を通して、32年間の重みが伝わる。


touzan-3.jpg「失うことの意味は、失って初めてわかる」が口癖の母。死んだ夫にかばわれて生き残った母にとって、夫や娘を思わない日はない。ひとりの人間の抱える悲しみは、海よりも深く、亡くした家族への愛は、あまりあるほどに強い。時の流れさえもいやすことのできない悲しみを抱え、気丈に生き抜く母をシュイ・ファンが好演。観終わって、心に残るのは、悲しみよりも、愛の深さであり、人間の強さ、尊さだ。


touzan-4.jpg2011年3月26日に全国公開を予定していた本作は、3月11日に起きた東日本大震災で上映延期となった。地震の再現シーンはあるものの、本作のテーマは、震災を乗り越える家族の絆。その悲しみに寄り添い、家族一人ひとりの心情を丁寧にすくい取った本作は、埋もれさせてしまうには惜しい作品。東日本大震災から4年が経とうとする中、ついに公開される運びとなった。この間、映画業界におけるデジタル化は劇的に進み、フィルム上映ができる映画館は激減。フィルムで上映できる環境を維持している気骨ある映画館にぜひ足を運んで観てほしい。

(伊藤 久美子)

公式サイト⇒ http://tozan-movie.com/

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