原題 | The Two Faces of January |
---|---|
制作年・国 | 2014年 イギリス,フランス,アメリカ |
上映時間 | 1時間36分 |
原作 | パトリシア・ハイスミス(「殺意の迷宮」創元推理文庫) |
監督 | 監督・脚本:ホセイン・アミニ(『ドライヴ』脚本) |
出演 | ヴィゴ・モーテンセン(『イースタン・プロミス』),キルスティン・ダンスト(『マリー・アントワネット』),オスカー・アイザック(『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』) |
公開日、上映劇場 | 2015年4月11日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー |
~クラシカルな映像が魅惑的なミステリー~
アメリカ出身の作家パトリシア・ハイスミスの小説「殺意の迷宮」に基づく心理サスペンスだ。往年の「見知らぬ乗客」や「太陽がいっぱい」が思い出され,いやが上にも期待が高まる。しかも,それを裏切らない水準を保っている。監督はヒッチコック作品の他にもフランスやイタリアのスリラーを研究したという。出口の見えない逃避行で閉塞感が漂っており,フィルム・ノワールの趣がある。その中に三角関係や父子関係も盛り込まれた。
ライダスは,ガイドをしながら観光客から手数料を掠め取っていた。チェスターは,親子ほど年齢差のある妻コレットを連れてギリシャにやって来た。旅行者のようで,実はアメリカで投資詐欺を働いて逃げてきたことが分かる。ギリシャまで追ってきた探偵に銃を向けられ,揉み合って殺めてしまう。それにライダスが巻き込まれて3人の逃避行が始まる。彼は,コレットに惹かれると共に,チェスターに最近亡くなった父の面影を見ていた。
ライダスとコレットが親密になり,チェスターのライダスに対する嫉妬が増幅し,コレットとチェスターの亀裂が深まる。背景も,彼らの姿を投影するように,汚れや傷の目立つ建物や荒れ地へと変わっていく。予想される展開ではあるが,3人の関係がバランスを欠き内部から崩壊する構図が見て取れて,不安と緊張が高まる。そして舞台がイスタンブールに移ると,次第に擬似的な父子関係が前面に表れ,悲惨な状況の中にも明かりが灯る。
コレットは男を幻惑して破滅させるような香気を放つファム・ファタルではない。終盤ではチェスターとライダスの関係に焦点が絞られ,絶望からの上昇が暗示されて終わる。亡夫の心に触れたライダスは改めて葬儀に出席する。それは,見送りと引継ぎの儀式で,古いものの終わりと新しいものの始まりだった。視点が自己を俯瞰せず内面に入るため,世界観は広がらない。だが,風に揺らぐ燭光に,降り注ぐ陽光とは別の良さが感じられる。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.kieta-uso.jp/
(C)2014 STUDIOCANAL S.A. All rights reserved.