制作年・国 | 2015年 日本 |
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上映時間 | 2時間19分 |
原作 | さだまさし『風に立つライオン』(幻冬舎文庫) |
監督 | 三池崇史 |
出演 | 大沢たかお、石原さとみ/真木よう子、萩原聖人、鈴木亮平、藤谷文子、中村久美、山崎一、石橋蓮司他 |
公開日、上映劇場 | 2015年3月14日(土)~TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ二条 他全国ロードショー |
~アフリカで撒かれた種が、大きな花を咲かせる時~
さだまさしが87年に発表した壮大なバラード『風に立つライオン』。ケニアで国際医療活動に従事した実在の医師・柴田紘一郎氏をモデルにしたこの曲に惚れ込み、映画化を企画したのは、主人公、島田航一郎を演じる大沢たかおだ。その意気込みが、演技の端々に伝わってくる。いや、演技というよりは、どんなときにも笑顔でケニアの戦乱で傷ついた子どもたちと接している航一郎は大沢たかおそのものなのかもしれない。ケニアの大自然を前に、むき出しの人間力がスクリーンに映し出されるヒューマンドラマ。最初は、さだまさし原作の感動物語を、劇画的な描写が得意な三池崇史監督が映画化?と思ったが、ケニアロケを交え、現地の人たちと共に作り上げたライブ感溢れる映像は、本当に力強く、さすがと思わせる。貧困や孤独を抱えながら、一生懸命生きている子どもたちにも目を向けたい。
「大丈夫、大丈夫」が口癖の外科医、島田航一郎(大沢たかお)は、勤務していた大学病院からケニアの熱帯医学研究所に派遣される。結婚を誓っていた恋人、秋島貴子(真木よう子)にプロポーズした航一郎だったが、貴子は離島にある実家の診療所に残る選択をし、二人は離れ離れになるのだった。ケニアで戦傷病院からの派遣要請を受けた航一郎は、次々に運び込まれる重傷患者たちの命を救うことができず悩み苦しむ。そんな中、ンドゥングという少年兵と出会い、他の子どもたちと共に勉強を教えながら心を通わせようとするが・・・。
戦乱で身も心も傷つき、両親も帰る場所もない子どもたちのため尽力する航一郎と、兵士として人を殺すことで生き延びてきたンドゥング。ンドゥングは、周りの子どもたちが航一郎や看護師・草野和歌子(石原さとみ)に心を開いていく中、反発を繰り返す。大自然の中で人間と人間がぶつかり合う、どこか演技を超えたような心の交流が真っ直ぐに響いてくる。心の底から笑い、子どもたちと遊び、彼らを導いていく医師であり父親のような存在の航一郎。もはや日本に帰るつもりのない彼が今でも想う恋人貴子に宛てた手紙は、本当に切ない。
ケニアと並行して描かれるのは、長崎の離島で診療所のお嬢ちゃん先生と呼ばれている貴子の日常だ。真木よう子演じる先生と離島の人たちとの交流は、本当に温かくほのぼのとしている。実際に現地で暮らす人たちが出演しているという部分でも、ケニア同様離島の生活ぶりがリアルで心地よい。そんな中、離れていても折に触れて航一郎を思い出す貴子の静かな想いが、また切ない。
物語は、80年代のケニアでの出来事から東日本大震災後の現代の石巻まで繋がっていく。航一郎がケニアで撒いた子どもたちの心を育む種は、時を経て航一郎の母国、日本で花開く。エンディングで壮大な映画版『風に立つライオン』が流れるとき、生きること、愛する人の幸せを祈ること、そして美しい自然がそこにあることを、改めて胸に刻むのだ。(江口由美)
公式サイト⇒http://kaze-lion.com/
(C) 2015「風に立つライオン」製作委員会