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『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』

 
       

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作品データ
原題 The Imitation Game 
制作年・国 2014年 アメリカ・イギリス 
上映時間 1時間55分
原作 アンドリュー・ホッジス「Alan Turing : The Enigma」
監督 監督:モルテン・ティルドゥム   脚本:グラハム・ムーア  
出演 ベネディクト・カンバーバッチ「SHERLOCK」/キーラ・ナイトレイ『アンナ・カレーニナ』/マシュー・グード『イノセント・ガーデン』/マーク・ストロング『裏切りのサーカス』
公開日、上映劇場 2015年3月13日(金)~ TOHOシネマズ みゆき座、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸 他全国ロードショー
受賞歴 第87回アカデミー賞 脚色賞 受賞!!

 

~ナチス倒した天才“引きこもり~

 

無敵を誇ったナチス・ドイツに、英米など連合軍が反撃を開始したのはノルマンディ上陸作戦からだった。『史上最大の作戦』(62年)をはじめ過去、何度も大スケールで映画化されているが、1944年6月5日に決行されたこの上陸作戦、当初は同じフランスでもイギリスから一番近い海岸「パ・ド・カレー」が最有力と見られていた。なぜカレーからノルマンディに変更されたのかは映画で詳しく語られなかったが、『イミテーション・ゲーム~』を見て“秘められた理由”が理解できた。そこには数奇な“戦争秘話”があった。


IG-2.jpg解読不可能の暗号を持つナチス・ドイツは、1940年ごろは無敵の快進撃を続けていた。フランスを占領、イギリスを空襲し、東ではソ連に攻め込んで「あと一歩」まで追い詰めた。ヨーロッパを蹂躙する敵と戦うには“エニグマ解読”しかない、とイギリス政府が取った手段が解読チームの結成だった。アラン・チューリング(ヘネディクト・カンバーバッチ)は「クロスワード・パズルを解くことが趣味」というオタッキーな天才、はっきり言えば変わり者。そんな男が、解読不可能と言われた最強暗号「エニグマ解読」を命じられ、精鋭チームを組んで挑む。“ただのオタク”にそんなことが出来るのか?


IG-3.jpg彼の戦いの相手は数だ。エニグマが難攻不落と言われるのは組み合わせの膨大な数。暗号パターンは159の後に0が18個も続く、まさに天文学的数字。10人が1日24時間働いても全部調べ終えるまで1200万年もかかるというから人間技では到底不可能だ。チームリーダーに選ばれたチェスのイギリスチャンピオン、ヒュー・アレグサンダー(マシュー・グード)のもと、精鋭チームは始動するが、変人チューリングは一人勝手にマシンを作りはじめ、制作費を却下されたらチャーチル首相に手紙で直訴するなど勝手放題。首相から責任者に命じられると同僚をクビにして、孤立を深めていく。


IG-4.jpg彼が考案した「チューリング・マシン」(愛称クリストファー)がフル稼働するが、解読はなかなか進まない。そんな中、もう一人、クロスワードパズルの達人ジョーン(キーラ・ナイトレイ)がチームに加わる。「女は仕事しない」時代、彼女はチューリングよりも早くパズルを解ける“達人”として、チューリングをフォローする。軍上層部は「成果を出せ」と急がせ、奇行が目立つチューリングを目の敵にするが、彼が「クビ」を言い渡された時、結束して反対したのは仲間たちだった。チューリングなしで解読出来ないことは全員が分かっていたのだ。
 

思わぬきっかけから解読に成功し、チームは歓喜する。だが、実はそれが苦悩の始まりだった。解読したことをドイツに知られたら「エニグマの構造を変えらる」とイギリスは新たな極秘作戦を進める。イギリス軍の船が襲われることが分かっていながら、救うことが出来ない、船には仲間の兄弟が乗っているのに、教えることは許されなかった…。


IG-5.jpg“戦争の英雄”は映画にうってつけの題材だ。公開中のクリント・イーストウッド監督『アメリカン・スナイパー』は英雄の“心の傷”を描いた問題作だが、160人を殺した“伝説的ヒーロー”だった。一方で『イミテーション・ゲーム』のような“誰にも知られない英雄”がいたことに驚く。日本は今年、戦後70年の節目を迎えるが、第二次大戦中にはまだまだこんな秘話が残っていた…。イギリス政府は「ヒトラーから世界を救うため」最後まで秘密を貫き通し、終戦後も書類を抹消、一切を闇に葬り去る。チームはさりげなく解散し、チューリングは当時、忌み嫌われた性癖を暴露され、犯罪者として断罪される。なんと…。


エニグマ解読はノルマンディをはじめ、スターリングラード(ソ連)など対独戦の大事な局面で連合軍に勝利をもたらす。チューリングは戦争終結を2年以上早め、彼が救った人数は実に1000万人を超えるという。ものすごい英雄だ。だが「勝利をもたらした快挙」も彼にとっては自分の能力を試すオタッキーなゲームに過ぎなかった。彼のマシンは「コンピューターの原型」になった。2009年になって、イギリスのブラウン首相がチューリングに「お詫びした」というニュース記事がこの映画の発端になったそうだが、当の本人にとっては大したことではなかったのかもしれない。

(安永 五郎)

公式サイト⇒ http://imitationgame.gaga.ne.jp/

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