原題 | Aimer,boire,et chanter |
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制作年・国 | 2014年 フランス |
上映時間 | 1時48分 |
原作 | アラン・エイクボーン |
監督 | アラン・レネ |
出演 | サビーヌ・アゼマ、イポリット・ジラルド、カロリーヌ・シオル、ミシェル・ヴュイエルモーズ、サンドリーヌ・キベルラン、アンドレ・デュソリエ他 |
公開日、上映劇場 | 2015年2月28日(土)~テアトル梅田、3月7日~京都シネマ、シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
~自由闊達な知性と遊び心が創り出した名匠の遺作~
2014年3月に世を去ったアラン・レネ監督といえば、遠い昔の『二十四時間の情事』や、「いったいなんのこっちゃ?」と言いたくなる難解さに脱帽しつつもなぜか気になって何度か観た『去年マリエンバートで』の印象が強いのだが、彼は軽やかなコメディセンスを発揮する達人でもあったと、本作を味わいながら改めて思う。お話としては昔のような重厚なものでなく、他愛もない内容なのかもしれないが、映画と演劇的空間を自由に行き来する手法はとても面白く、物語の要となる男が一切顔を出さないのに、他の人々の言動から、彼の人となりが鮮やかに浮かび上がってくるという展開に興味を持った。
舞台はイギリスのヨークシャー郊外(でも、登場人物たちはフランス語を喋るのだけど)。実写の風景から始まり、書割りを背景とした演劇舞台のような空間へと移る。そして、3組の夫婦が登場してくるのだが、医者のコリンが妻のカトリーヌに、知人のジョルジュが末期がんだとつい口を滑らせたことから、てんやわんやの騒動になる。友人夫婦のジャックとタマラ、ジョルジュの元妻で今は農夫と暮らしているモニカなどすべての人の知るところとなる。ジョルジュに元気を出させようと地元の劇団に引っ張り込んだりするが、ジョルジュは人生最後のバカンスに、複数の女性を誘っていたことが判明し…。
ジョルジュとの“秘密”を持つ女たちに引きずり回される男たちが可笑しい。年に関係なくロマンスを夢見る女たちの可愛らしさとしたたかさが目立つ一方、右往左往する男たちの小心ぶりが露わになってくる。それでも、アラン・レネ監督の、人生を見渡すような楽天性が随所に。原作はイギリスの戯曲家アラン・エイクボーンの『お気楽な生活』。これを脚色したものだが、タイトルを『愛して飲んで歌って』としたところに、何が起ころうとも日々を謳歌しようよというメッセージが込められているようで、人生の核は軽妙かつ深遠なのだなあと思ったりするのである。フランスの人気コミック作家ブルッチによる書割りやイラストが多用され、おとぎ話の世界に入り込んだような雰囲気を醸し出している。“映画は総合芸術”ということを全編で体現したかのような本作が、ベルリン国際映画祭において普通は若手の革新的な監督に与えられるアルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)に輝いたことは、とてもとても素敵なことだと思う。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://crest-inter.co.jp/aishite/
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