原題 | Foxcatcher |
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制作年・国 | 2014年 アメリカ |
上映時間 | 2時間15分 |
監督 | ベネット・ミラー(『カポーティー』『マネーボール』) |
出演 | スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、シエナ・ミラー、アンソニー・マイケル・ホール、ガイ・ボイド他 |
公開日、上映劇場 | 2015年2月14日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー |
~レスリング重量級並みの心理戦を堪能できる~
デュポン社というのは、火薬の製造販売でアメリカ有数の財閥となったが、一方で、フライパンなどの調理器具に施されるテフロンの商標も持っている。ま、そんなことはこの映画とは関係ないのだが、その御曹司がオリンピック金メダリストのレスリング選手を射殺したという1996年の事件は世間を大いに騒がせた。「え!なんで、なんでえ?」の真相に迫ったのが本作であるが、厚みのあるしっかりとしたドラマとして、事件に至る背景をつぶさに見せてくれる。
デイヴとマークのシュルツ兄弟は、共に1984年のロサンゼルス・オリンピックで金メダルをアメリカにもたらした。幼い頃に親が離婚したため、デイヴはマークの父親のような存在であり、またマークをより大きく育てようとするコーチの役割も担っていた。金メダリストといえども、レスリングがマイナー競技扱いされるアメリカでは、彼らの社会的地位はけして高くない。平凡な家庭人でもあるデイヴと比べ、独り者のマークはだんだんと鬱積したものを意識するようになっていた。そんなある日、大富豪のジョン・デュポンからマークに驚くようなオファーが舞い込む。それは、ジョンが率いるレスリングチーム“フォックスキャッチャー”の一員となって、一緒にソウル五輪での世界制覇を成し遂げようというものだった。
広大な敷地の中にある整ったトレーニング施設、住まう一軒家まで与えられ、マークの心が舞い上がったとしてもおかしくはない。だが、ジョン・デュポンという人物は次第に謎めいた奇行者としての顔を見せるようになる。コカインを勧めたり、いきなり銃をぶっ放したり、敷地内で装甲車を走らせようとしたり…。フォックスキャッチャーにデイヴも参加してからは、ますます薄気味悪くなってくる。そうして、衝撃的な悲劇を呼び起こす。
事件当時は総合失調症に罹っていたそうだが、母親との確執が大きな要因のようだ。ジョンが愛好するレスリングを下品だとしてけして認めない母親との関係には、愛されたいのに愛されない子供が抱くような苛立ちが見て取れる。付け鼻を用いてジョンを演じたスティーヴ・カレルは、この映画により、カメレオン俳優という称号を確かなものにするだろう。そして、大げさな演出を排除しつつ、俳優の潜在能力を引き出すベネット・ミラー監督の力量もますます注目されるに違いない。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://www.foxcatcher-movie.jp/
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