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『ビッグ・アイズ』

 
       

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作品データ
原題 Big Eyes 
制作年・国 2014年 アメリカ 
上映時間 1時間46分
監督 ティム・バートン
出演 エイミー・アダムス、クリストフ・ヴァルツ、クリステン・リッター、ジェイソン・シュワルツマン、ダニー・ヒューストン、テレンス・スタンプ
公開日、上映劇場 2015年1月23日(金) TOHOシネマズ 有楽座他全国順次ロードショー

 

~嘘か真か“現代芸術家”ティムの奇怪な世界~

 

アンディ・ウォーホルの有名な“絵”マリリン・モンローは、門外漢にもなじみ深いが、これが深淵な芸術かどうかは??  現代美術=ホップアートは親しみやすさが魅力で売りでもある。いささか怪しげなポップアートの世界に切り込んで見せたのが“現代美術”風ポップ映画のティム・バートン監督。『ビッグ・アイズ』は自己検証か、ただのテレか、はたまた痛烈な自己批判か。興味深い“現代芸術”考察映画だ。
 

bigeyes-2.jpg「その作品はすばらしい。そうでなければ、多くの人に愛されない」。冒頭のウォーホルの言葉が映画を言い表している。タイトル通り、大きな目の少女ばかりを描いて人気画家になったウォルター・キーン(クリストフ・ヴァルツ)の物語。彼は口八丁手八丁、情熱あふれるアイデアマン。ナイトクラブのオーナーと大げんかして新聞の一面を飾ったことをきっかけに一夜にして注目を集める人気作家に。独特の異常なほど目の大きい少女の絵「ビッグ・アイズ」が人気を集める。
 

人気を決定付けたのは彼のアイデアで売り出した安価な複製が爆発的なブームを巻き起こしたこと。ウォルターは“アート界の寵児”とテレビ、新聞にもてはやされる。ウォーホルは彼の手法を真似、より大量に印刷して売りまくったのだから“同類”の親近感があったかも知れない。
 

bigeyes-3.jpgそんな活力あふれるウォルターに惹かれて(口説かれて)結婚したのが内気で控え目な妻マーガレット(エイミー・アダムス)。彼女も画家。性格通り、地味で控えめな作風で売れない画家だったのだが、注目の“ビッグ・アイズ”を描いたのはウォルターではなく、実はマーガレットだったからエライこっちゃ…。
 

最近、似たような“事件”があった、と思ったら、ジャンルは違うものの昨年、世間を騒がせた“ゴースト作曲家”事件ではないか。芸術家はウソついたらアカン。自分の命を削ってまで作った芸術品が、他人の名前で世に出るなんて、夫だって許せるもんではない。マーガレットの悔しい思いはいかばかりか。
 

二人はプール付き豪邸に暮らし、ウォルターは派手なセレブたちとの交流に忙しい。マーガレットはと言えば、親友はもちろん愛娘にも嘘をつき通し、奥まったアトリエにこもって1日16時間も絵筆を握り続ける日々。一度客の前で熱弁をふるうウォルターに、彼女が「絵は私の分身よ」と抗議するが、誰も耳を貸さない。夫は「サインはキーン。僕たちは一心同体だ」とごまかす…。嘘っぱち男役クリストフ・ヴァルツの威勢のいい“口だけ男”がハマり役だ。
 

“パリで絵の修行”をしてきたはずが、風景画にはなんら特徴なく、ある時、マーガレットが絵の具の下から別人のサインを見つける。“パリ修行”も嘘?  夫は“売れない画家”でさえない、ただの大嘘つきだった…。
 

bigeyes-4.jpgセレブの暮らしを続けるため、妻に嘘を強要する夫は、64年の「NY万博」で展示されることを目論んで贈呈した絵が、有力新聞「タイムズ」で評論家(テレンス・スタンプ)に酷評されて激怒、ついに正体がバレる時がきた。おとなしいマーガレットも追い込まれ壊れかけてようやく“モンスター”との闘いを決意、娘とともに家を出、ハワイに身を移す。
 

 


 《ネタバレ注意!》 


★前代未聞、一目瞭然の夫婦裁判劇


「一体、どちらが正しいのか」とはっきり白黒つける裁判映画(とりわけ弁護士)は、映画少年の夢、憧れだった。50年代独立プロの「冤罪追究」映画には熱くなった。「八海事件」をモチーフに、正木ひろし弁護士の原作を名匠・橋本忍が脚本化、監督今井正という“強力トリオ”による『真昼の暗黒』(56年)は国家権力が冤罪事件を作るシステムを問う裁判映画の決定版だった。
 

山本薩夫監督は65年に、徳島のラジオ商殺しを描いた『証人の椅子』(65年)があり、戦後すぐの「松川事件のように見える列車転覆事故」の映画『にっぽん泥棒物語』も痛快喜劇だった。事故を目撃した泥棒(伊藤雄之助)が証人として法廷に呼ばれ、図らずも被告の無罪を証明してしまう。被告を有罪にしたい検事の論告に、泥棒の伊藤雄之助が「嘘つきは泥棒の始まりだよ」と言い返すくだりには爆笑した。左翼独立プロをリードしてきた山本薩夫監督の絶調期ではなかったか。最近では『BOX  袴田事件  命とは』(10年、高橋判明監督)があった。この映画では後に“死刑囚“袴田さんが逆転無罪を勝ち取るという“成果”もあげている。
 

 『ビッグ・アイズ』は最後の“泥沼の裁判劇”が見どころ。離婚する条件に「ビッグ・アイズ」を100枚描けなどと無理難題をふっかけるウォルターに、裁判所は法廷で決着をつけることを決める…。
 

なるほど、「描けるか描けないか、目の前でやってみなさい」という実に分かりやすい裁判。断固「自分が描いた」と言い募り、裁判官に「腕が痛くてかけない」とうろたえ、逃げまくるウォルターが絶品。殺人事件ではないが、痛快丸かじりな裁判劇でもあった。   

(安永 五郎)

公式サイト⇒ http://bigeyes.gaga.ne.jp/

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