映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『スパイ・レジェンド』

 
       

spaylejend-550.jpg

       
作品データ
原題 The November Man 
制作年・国 2014年 アメリカ 
上映時間 1時間48分
原作 ビル・グレンジャー 
監督 監督:ロジャー・ドナルドソン(「13デイズ」)   脚本:マイケル・フィンチ(「プレデターズ」)、カール・ガイダシェク(「オブリビオン」)
出演 ピアース・ブロスナン(「007/ダイ・アナザー・デイ」)、オルガ・キュリレンコ(「007/慰めの報酬」)、ルーク・ブレイシー(「G.I.ジョー バック2リベンジ」) 
公開日、上映劇場 2015年1月17日(土)~角川シネマ有楽町、 ユナイテッド・シネマ豊洲、布施ラインシネマ、ユナイテッドシネマ岸和田、シネプレックス枚方、ユナイテッドシネマ大津、ほか全国ロードショー

 

~伝説のスパイ「国際政治の闇」を斬る~

 

スパイ映画の元祖は007。英国情報部MI6のジェームズ・ボンドがスパイ像を決定付けた。初代ボンドで名を上げたショーン・コネリーは、にもかかわらず「イメージ固定」を嫌って降板。その後、彼は独特のキャラクターで“脱ボンド”に成功した。その後も多くの俳優がボンドを“襲名”し、ダニエル・クレイグ主演で今なお続行中。半世紀を超える“映画の財産”になっている。(24作目となる新作は、2015年11月公開予定)
 

spaylejend-2.jpgもう一人、忘れられないのが5代目ボンドのピアース・ブロスナン。90年代に『007/ゴールデンアイ』(95年)など4本に出演、3作で興行成績10億㌦超えを果たした007シリーズ“中興の祖”でもある。  彼もまた、様々なジャンルに挑み、存在感を発揮したが『007/ダイ・アナザー・デイ』以来、13年ぶりに出演した『スパイ・レジェンド』はタイトル通り、自ら伝説のスパイ役で“仕事の総決算”をした。複雑な国際情勢、政治家との関わりなど「絵空事」ではないスパイの深みを感じさせた。
 

spaylejend-3.jpgつい最近まで現役だったCIA諜報員ピーター・デヴェロー(ブロスナン)はスイスで隠遁生活を送っていたが、元同僚の依頼でかつての恋人ナタリア「回収」のためロシアへ。だが、彼女はピーターの目の前で殺される。暗殺者はCIA時代の教え子メイソン(ルーク・ブレイシー)。元弟子と銃を向けあうことになる…米ソ冷戦時代と違い、誰が敵か見えにくいところが“今のスパイ映画”らしい。
 

ピーターの仕事は“冷戦時代の残務処理”だった。ナタリアから聞き出した女アリス(オルガ・キュリレンコ)と接触を図ると彼女は敵に追われ、ピーターは逃走を手助けすることに。セルビアの首都ベオグラードで突然始まる追いつ追われつの逃走劇、現代スパイ活劇は目まぐるしい。ピーターはそれでもアリスの心をとらえてベッドインする。これがコネリー以来の“スパイの強み”だった。華やかなボンド・ガールは姿を消したが、スパイはモテることも多くのファンを惹き付けた。
 

spaylejend-4.jpg派手なカーチェイス、正確な射撃、敵を倒す体のキレなど「年取らない」スパイ・ブロスナンも健在だが、ピーターは知らぬ間に現代史の闇に首を突っ込んでいく。敵の正体はなんとロシア大統領候補フェデロフ(ラザルス・リストフスキー)。ナタリアは巨大な相手のスキャンダルを追って消されたのだった。ピーターが探ると、敵はチェチェン紛争にも絡む大物、その裏にはなんとアメリカも関係していることが分かる。CIA内部にロシアのスパイがいる。もはや誰も信じられない…。
 

米ソ冷戦は長い間、スパイ映画ネタの宝庫だった。だが、89年にベルリンの壁崩壊、91年のソ連崩壊で冷戦は終結。スパイ映画は敵を失ってリアリティーを欠いた。映画のセリフにあるように、主役は中東になった。冷戦を象徴する出来事は62年のキューバ危機だ。ソ連によるキューバへのミサイル配備とそれを阻止するため、当時のケネディ大統領が「海上封鎖」を決断し実行した。あの時はまさに“一触即発”、核戦争が身近に迫っていた。
 

「007シリーズ」第1作『007ドクター・ノー』製作はこの年、62年。キューバ危機冷めやらぬ時期、実に生々しい世界情勢で人気と話題を集めた。この頃、西側の人々はボンド出現を待望していたのだろう。先ごろ、米国オバマ大統領がキューバとの国交交渉を発表して世界を驚かせた。冷戦の象徴だったキューバ危機は、52年目にして名実ともに終わる。
 

映画の元CIA諜報員ピーターもまた、チェチェン紛争へのアメリカの関与、ひいては「ロシア支配」という壮大な野望を相手にする。「本当の敵」どころか、敵も味方も分別不能の事態が“今そこにある危機”を現している。

(安永 五郎)


★ピアース・ブロスナン インタビュー⇒ こちら
★公式サイト⇒ 
http://spylegend.jp/
© 2014 No Spies, LLC. All Rights Reserved

 

カテゴリ

月別 アーカイブ