原題 | Hross i oss 英語題:OF HORSES AND MEN |
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制作年・国 | 2013年 アイスランド・ドイツ・ノルウェー |
上映時間 | 1時間21分 PG12 |
監督 | ベネディクト・エルリングソン |
出演 | イングヴァル・E・シグルズソン、シャーロッテ・ボーヴィング、ステイン・アルマン・マグノソン、キャルタン・ラグナルソン、ヘルギ・ビョルンソン、シグリーズル・マリア・エイルスドティール、フアン・カミーリョ・ロマン・エストラーダ他 |
公開日、上映劇場 | 2014年12月27日(土)~テアトル梅田、元町映画館、1月17日(土)~京都シネマ、ほか全国順次公開 |
~馬と人の共存関係、優しくもあり、哀しくもあり。想像を超えた驚きのエピソードを綴る~
映画の冒頭、映されているのは草原の風景かと思いきや、馬の体毛である。そして、馬の大きな瞳にクローズアップ、どこか哀しげに見える。この馬の瞳のアップが、いくつものエピソードを区切る役割を担っているのだが、その瞳に映っているのは、アイスランドの荒れ地だったり、そこで暮らす人の姿だったり。とにかく、一風変わった映画である。日本の都市生活者ならビックリ仰天の、馬と人間をめぐるドラマだが、ブラックな味わいのあるコメディの要素も多分に感じられ、ついくすりと笑ってしまった。
乗馬観光というビジネスも営まれているアイスランドの村、馬は大切な家族であり重要な家畜でもある。人々は望遠鏡を手にし、村人たちの行動を逐一確かめている。互いにひかれあっている中年男女がいるのだが、彼らの馬たちのほうが求愛行動を先に起こしてしまったために馬たちにも悲劇が訪れる。また、ウォッカを買うために、馬に乗って海上の船まで泳いでいく無謀な男がいる。あるいは、柵を壊して回る男とそれを阻止しようとする男との追跡劇や、雪の中で迷子になった外国人旅行者が暖をとるために決断した驚愕の行動などが描かれていく。
それぞれのエピソードには哀しみの色も含まれているけれど、大自然に包み込まれた馬と人間、その愛情も怒りも生も死も、すべて自然の一部であるというふうに淡々と見せてくれる。馬たちがひそかに発しているような人性、人間たちが抱え持つ動物性という視点を置くと、実に興味深く、また可笑しい。馬たちは美しく凛としていて、人間たちはどこか滑稽でもあるのだが、馬の瞳は判断を下したりしない。ただ、見つめている(ように思える)。神秘、あるいは崇高ともいえる輝きを放ちながら。
本国ではエッダ賞(アイスランド・アカデミー賞)の主要6部門に輝いた作品。アイスランド演劇界では著名な演出家だが、長編映画は初監督というベネディクト・エルリングソンのみごとな手腕を確かめてほしい。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://www.magichour.co.jp/umauma/
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