制作年・国 | 2015年 日本 |
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上映時間 | 2時間09分 |
原作 | さそうあきら「マエストロ」(双葉社刊)漫画アクション連載 |
監督 | 監督:小林聖太郎 脚本:奥寺佐渡子 指揮指導・指揮演技監修:佐渡裕 音楽:上野耕路 エンディングテーマ:辻井伸行「マエストロ!」(エイベックス・クラシックス) |
出演 | 松坂桃李 miwa/ 古舘寛治 大石吾朗 濱田マリ 河井青葉 池田鉄洋 /モロ師岡 村杉蝉之介 小林且弥 中村倫也 斉藤暁 嶋田久作 /宮下順子 淵上泰史 木下半太 中村ゆり /綾田俊樹 石井正則 でんでん / 松重豊 /西田敏行 |
公開日、上映劇場 | 2015年1月31日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー |
~人々の心に響く美しい一瞬を追い求めて~
クラシック音楽の魅力を映した優しい映画だ。不況で解散した中央交響楽団が謎の指揮者天道徹三郎の発案で再結成される。1か月後になぜか2公演が予定されていた。曲目はベートーベン「運命」とシューベルト「未完成交響曲」だ。天道は,廃工場で指揮棒の代わりに大工道具を手にして,楽団員に容赦のない指示を飛ばす。楽団員は,反発しながらも,その力量には一目置かざるを得ない。運命の扉が開かれ,未完成の輝きが見えてくる。
香坂真一は,オーケストラのまとめ役であるコンサートマスターだ。ヴァイオリニストだった亡父の奏でた音を追い続けているが,うまくいかない。公演に向けて希望が見えたとき,亡父と天道の過去の繋がりを知って心が乱れる。天道の妻が復活公演の2日目に重要な役割を果たすが,彼女の立場や香坂との関係を示す過去の描写が少々弱い。だが,クライマックスの公演シーンには,過去を超えて未来へと響き合う音の素晴らしさがあった。
松坂桃李は,音楽に魅せられて,迷いながらも成長していく青年を好演しており,演奏シーンも見事なものだった。西田敏行は,至高の音楽を生み出すためには決して妥協しないが,厳しいだけではない人物像を造形している。miwaは,アマチュアのフルート奏者橘あまねに扮して,天道と楽団から心に響く音を生成する触媒のような役割を果たしていた。神戸の方言を巧みに操り,独奏シーンでは被災時の心情を映した音色を奏でている。
楽団員の個性が描き分けられているので,性格の異なる楽団員が奏でる音が響き合い,調和が生み出されるときの感動が大きい。特に1日目の公演シーンでは,カメラのアングルがかなり工夫されており,耳だけでなく目も十分潤される。実は佐渡裕指揮によるベルリン・ドイツ交響楽団の演奏だという。そして,エンディングではピアニスト辻井伸行によるオリジナル曲のピュアな演奏に心が洗われる。何とも贅沢な時間が流れている作品だ。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://maestro-movie.com/
(C)2015『マエストロ!』製作委員会 (C)さそうあきら/双葉社