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『ベイマックス』

 
       

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作品データ
原題 BIG HERO 6
制作年・国 2014年 アメリカ
上映時間 1時間48分
監督 クリス・ウィリアムズ
出演 日本語吹き替え:菅野美穂、小泉孝太郎他
公開日、上映劇場 2014年12月20日(土)~全国ロードショー
受賞歴 第72回ゴールデン・グローブ賞アニメーション映画賞ノミネート  ★第87回アカデミー賞 長編アニメ賞 受賞!!
 
 

~「ひとりじゃない」ことの心強さ~

 

2014年日本で最大のヒットとなったアナ雪こと『アナと雪の女王』がダブルヒロインを立てた徹底的なガールズムービーだとすれば、ディズニー最新作の『ベイマックス』は男子の好きなものがてんこ盛り、まさにワクワクがいっぱいのボーイズムービーだ。「ありのままで」と力強く歌い上げるアナ雪に対し、『ベイマックス』を通して感じるのは「ひとりじゃない、僕がそばにいます」という包み込むようなメッセージ。そして、何よりも魅力的なのは、“ふわぽにょ”ボディーで、包容力のかたまりのようなケアロボット、ベイマックスだろう。架空の都市、サンフランソウキョウを舞台に、機械大好きな天才少年ヒロと亡き兄が作り上げたベイマックスが繰り広げるアドベンチャー。ベイマックスに込められた兄の想いや、日本文化にオマージュを捧げた、徹底的に作り込まれた細部の和洋折衷ぶりにも注目したい。

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科学者たちが多く住むサンフランソウキョウ、機械いじりが大好きな天才少年ヒロは兄、タダシ(声:小泉孝太郎)と叔母キャス(声:菅野美穂)の3人で暮らしていたが、ヒロが開発した画期的なマイクロロボット発表の場で突然事故が起こり、タダシは帰らぬ人となってしまう。失意のヒロの前に突然現れた白くて大きい風船のようなロボット、ベイマックス。それはタダシが人間のあらゆる傷をケアするために作ったケアロボットだった。
 
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「痛い」と言えば、全身をスキャンし適切な処置を瞬時に行うベイマックス。心が痛いということを学べば、後ろからきゅっと抱きしめてくれたり、「私もベイマックスがほしい!」と思うぐらい愛らしいロボットだ。映画においてロボットは闘うものとして登場してきたが、ベイマックスは人を傷つけるという意味での闘いはしない。ヒロの心の傷の原因が兄の不可解な死であることを知り、ヒロに先導されて戦闘訓練を受け、合体ロボシリーズのような真っ赤な鎧を身にまとった姿で空を飛び、敵と思われる相手に向かっていくシーンもある。それでもただやっつけて終わりではなく、タダシの想いをヒロに伝え、憎しみ合いの連鎖をそっと断ち切るのだ。
 

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ヒロを支えてくれるタダシの友人たち、そしてタダシがヒロに遺したベイマックス。彼らが団結して闘うシーンは、戦隊シリーズのような見せ場がたっぷりだ。鳥居風のあしらいがあるゴールデンゲートブリッジもどきや、サンフランシスコ名物のケーブルカーに提灯がぶら下がっていたり、突然下街の高架下のような場所が現れたり、看板一つに至るまで日本的要素が発見できるのも楽しい。そして、この映画のために作られた音楽ではないかと思うぐらいマッチしていたのが、エンディングで流れるAIの大ヒット曲『STORY』。日本版では英語の歌詞で歌われており、懐かしくも新鮮な感動を呼ぶ。軽妙なやりとりや、大冒険の後、「ひとりじゃない」とそばで守ってくれる存在の力強さが、ことさら心に沁みてくる。
(江口由美)
 
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