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『フューリー』

 
       

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作品データ
原題 FURY 
制作年・国 2014年 アメリカ 
上映時間 2時間15分
監督 監督・脚本・製作:デビッド・エアー
出演 ブラッド・ピット(製作)、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル
公開日、上映劇場 2014年11月28日(金)~TOHOシネマズ日劇、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、ほか全国超拡大ロードショー

 

~百戦錬磨の責任感の強い寡黙なリーダー
  新たなブラッド・ピットにしびれる!~

 

FURY-2.jpg何と言っても5人の強い絆で結ばれた仲間意識が壮絶な戦場でのヒューマンドラマを際立たせている。たった5人で300人余りのナチス精鋭隊を迎え撃つ、その決死の覚悟に新たな戦争映画の名作の誕生を感じた。
1945年4月、第二次世界大戦末期、死と隣り合わせの戦場を、北アフリカ戦線からノルマンディ上陸、フランス、ベルギーを経て、今まさにベルリンを目前にして絶体絶命の危機を迎えようとしていた。ドン・コリアー軍曹の、「仲間を守る」「任務を確実に遂行する」という強い責任感のもと、一致団結して生き抜いてきた「フューリー」(激しい怒り)と呼ばれた戦車隊。その運命や如何に?
 

FURY-4.jpg戦争映画も時代と共に変わってきた。年齢と共に見方が変わってきたのかもしれないが、『ディア・ハンター』(‘78)『プラトーン』(‘86)『プライベート・ライアン』(‘98)『ハート・ロッカー』(‘08)など、戦場における人間模様に焦点があてられた作品が印象深い。ブラッド・ピット主演の『フューリー』は、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線における戦車隊の活躍を描いているが、戦争末期のドイツ国内の惨状や殺戮の連続である戦争本来の意味を、見る者を圧倒する迫力で訴えかけてくる。


FURY-7.jpg『フューリー』を見て、『コンバット』(‘62’~67)という連続テレビドラマを思い出した。特に、ブラッド・ピットが演じた戦車隊のドン・コリアー軍曹は、ヴィック・モローが演じたサンダース軍曹のキャラクターに似ている。百戦錬磨の大ベテランであることや、仲間を守るため自他共に厳しく、忠実な任務遂行という強い責任感の持ち主で、寡黙なところなどもそっくりだ。歴戦の勇士を思わせる傷だらけの顔やがっちりとした体格など、ブラッド・ピットが年相応の渋い男らしさで惹きつける。


FURY-3.jpg他の4人の俳優もキャラクターに合った個性を発揮して面白い。砲手ボイド(シャイア・ラブーフ)は牧師の息子で、何かにつけて聖書の一節を語っては仲間を励ます冷静な名砲撃手。操縦士のトリニ(マイケル・ペーニャ)は酒好き女好きの遊び人だが、機敏に応戦する切れ者。装填手のグレイディ(ジョン・バーンサル)は粗野で口は悪いが、メカに強く恐れ知らずの勇者。この3人はコリア―軍曹と北アフリカ戦線からずっと一緒に戦ってきた、いわば家族のような存在だった。


FURY-6.jpgそこに、戦死した副操縦士の後任として新兵のノーマン(ローガン・ラーマン)が仲間入りする。事務方を希望して入隊したノーマンは、戦うことはおろか前線に出るのも初めて。コリア―軍曹の厳しいシゴキに耐え兼ねて悲鳴をあげるが、それは非情な戦争を生き抜くための親心なのだ。まだ幼さの残るノーマンのために女性とのラブチャンスを作ってあげたり、何かにつけて父親のように面倒をみたりする。非情になりがちな戦場でコリア―軍曹が見せる優しさは、見る者をより人間らしく幅広い視点で戦争を見直させているように感じた。ローガン・ラーマンの情感豊かな必死の表情こそが、本作のテーマを象徴しているようだ。

 


 
FURY-5-2.jpg『フューリー』で登場する戦車はすべて本物というからびっくり!
特に、ドイツ軍の「ティガ-」戦車との戦闘シーンは白眉!
指示を出す車長や操縦士の目線で対戦車や周囲を捉え、スピーディーで機動力のあるカメラは、まるで車中にいるようなヴァーチャル感で興奮させる。『パットン大戦車軍団』(‘70)の頃とは大きく進歩した臨場感は手に汗握る迫力だ。「ティガ-」戦車は砲撃を受けてもこたえない分厚い特殊鋼板でできており、さぞかし連合軍にとっては恐ろしい戦車だったことだろう。本作でも、戦車連隊を組んで臨んでもしぶといティガ―に苦戦していた。ロシア映画の『ホワイトタイガー』(‘12)では、神出鬼没のナチス極秘戦車「ホワイトタイガー」相手に悪戦苦闘するソ連軍を、スリラー色の強い戦争アクションとして描いていた。

(河田 真喜子)

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