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『ガンズ&ゴールド』

 
       

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作品データ
原題 Son of a Gun 
制作年・国 2013年 オーストラリア 
上映時間 1時間49分
監督 ジュリアス・エイヴァリー
出演 ユアン・マクレガー、ブレントン・スウェイツ、アリシア・ビカンダー、ジャセック・コーマン、マット・ネイブル
公開日、上映劇場 2014年12月20日(土)~シネ・ヌーヴォ ほか全国順次公開

 

~常識破り、強盗一味の“分裂”~

 

guns&gold-2.jpg綿密な強盗計画。襲撃時間、ブツ(金か宝石か)、逃走手段とその経路、仲間同士の友情と裏切り、ギンギンに脂ぎった男たちの欲望が火花を散らす…。これぞクライム・アクションの醍醐味だ。

古今東西、名匠、巨匠、俳優陣も大物、若手たちが何度も挑んで来た。有名なのがフランク・シナトラがボスになり、シナトラ一家総出演の『オーシャンと十一人の仲間』(60年)。これは近年、ジョージ・クルーニーのボス役で『オーシャンズ11』(01年)から『~13』(07年)まで、ブラピ、マット・デイモンら“シナトラ一家”に負けない豪華キャストでリメイクされ人気シリーズになった。現実にはやりたくても出来ない「強盗映画」人気は古くから根強い。

今年の日本映画でも、男女が入り乱れて“分け前”を奪い合う『サンブンノイチ』(品川ヒロシ監督)が新趣向を感じさせたが、オーストラリアの強盗映画『ガンズ&ゴールド』の“意外な展開”には驚かされた。時代は変わっても強盗映画のタネや趣向は尽きない。

主役はユアン・マクレガー。ロマン・ポランスキー監督『ゴーストライター』を経て今や貫禄十分。で、今作では若手の“指導者役”も務める。

guns&gold-3.jpgオーストラリア、パースの刑務所に19歳の若者JR(プレントン・スウェイツ)が入って来る。初犯で軽罪、半年で出所できるはずだったが、囚人同士のいざこざが日常茶飯事の吹きだまり。同房の囚人が暴行に耐えかねて自殺、JRが次の標的になったからたまらない。同じく強盗の罪で服役中のカリスマ・リーダー、ブレンダン(マクレガー)が「チェス好きのよしみ」で彼に救いの手を差し延べる。出所まで守る引き換えに“ある取引”を持ち掛ける…。

強盗映画にもうひとつ不可欠なのが、ボスの存在。腕の立つベテランが食いつめ者を集めて束ね、強盗団を結成する。ブレンダンとJRの“師弟コンビ”の結束は固いはずだ。

このジャンルの代表格である名作『地下室のメロディー』(63年、アンリ・ヴェルヌイユ監督)が同様の展開だった。こちらのボスは泣く子も黙る大物ジャン・ギャバン、弟子は“天下の二枚目”アラン・ドロン。出所した老ボス、ギャバンがカジノの地下金庫を狙い周到な計画を練る。計画がどれほど緻密かが、強盗映画の出来を左右する。

計画の災いになるのが仲間の女性関係。女から計画が破綻する映画を何本も見た。『地下室のメロディー』のギャバンは女に忙しいドロンに対し「下半身にしまりがない」と説教したものだ。ドロンはデビュー当時、美ぼうが売り物の“チャラ男”役が多かったが、ギャバンのカツ!が効いたのか、これ以後、シブさを身につけて数々の名作に出演。“ドロン変貌”のきっかけとなった映画であり、セリフでもあった。

guns&gold-4.jpg 『ガンズ&ゴールド』のJRも同様。半年後に出所した彼は、ブレンダンの指示で犯罪組織のボス、サム(シャセック・コーマン)に接触、次の“仕事”に備えて準備する。彼との取引条件は「脱獄の手伝い」だった。  脱獄したブレンダンはサムから「金鉱の精錬所」襲撃を持ちかけられる。犯罪の天才ブレンダンは、さっそくJRらとチームを結成するが、若く二枚目の彼は、サムの下で働くロシア出身の美女ターシャ(アリシア・ヴィキャンデル)にぞっこん。彼女はサムの手下で“危険な存在”だった。  ギャバンのように、ブレンダンも「計画に集中しろ」とJRをたしなめる。「女に騙されて捕まった野郎を何人も見てきた」という忠告も、男と女の恋の炎は止められない…。

オーストラリアの闇社会で繰り広げられる騙しあいは目が離せない。信用出来ない組織のボス・サムと、チェス同様、常に先を読む強盗団リーダー、ブレンダン。6本の金塊奪取に成功したものの、手違いから現場は警官隊に包囲され、思いがけない銃撃戦、激しいカーチェイス、挙げ句にキツネとタヌキのバカしあい、どう転ぶか分からない展開が見ものだ。

guns&gold-5.jpgブツの行方、サムとブレンダンの騙しあいに加え、「分け前が手に入ったら逃げよう」と“ボスの女”ターシャと固く約束をかわしたJRの動向に注目。仲間たちとの強盗か、危ない美女との約束か、究極の二者択一を前にJRはどう出るのか…。

  JRはターシャに本気で惚れ込み、自分の将来を賭ける覚悟を決める。ターシャの愛が真実かどうか、女に賭ける決意をした若者の純情。恋の行方が最後まで惹き付ける。

  『地下室のメロディー』では、札束を隠すのに成功したものの、あっと驚く衝撃のラストで評判を呼んだが、『ガンズ&ゴールド』もまた意表を突くエンディングが興味深い。これこそ“新しい価値観”だろうか。

(安永 五郎)

公式サイト⇒ http://guns-gold.jp/

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