原題 | Devil's Knot |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 1時間54分 |
監督 | アトム・エゴヤン |
出演 | コリン・ファース、リース・ウィザースプーン、デイン・デハーン、アレッサンドロ・ニボラ、ブルース・グリーンウッド |
公開日、上映劇場 | 2014年11月14日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS 他全国ロードショー |
~冤罪の可能性を秘めた3少年惨殺事件の闇に迫る衝撃作~
この映画は、1993年アメリカで実際に起きた8歳の3人の少年が惨殺された事件が基になっている。当時パンクロック=悪魔信奉者と疑われた3人の少年が犯人として逮捕され、ずさんな捜査や歪曲されたアリバイや自白を証拠とした裁判の末に結審したが、いまだに多くの疑惑を残したまま事件の真相は解明されていない。監督は、『スイートヒアアフター』(97)『アララトの聖母』(02)と、実際に起きた未解決事件を基に、人間の邪悪さや、真相に迫る人物の悲哀を透明感のある映像で浮き彫りにしてきたアトム・エゴヤン監督。現在でも危険をはらむ問題に果敢に切り込んでいる。
【STORY】
1993年5月5日、アメリカはアーカンソー州ウェスト・メンフィスで、8歳の3人の少年が自転車で出掛けたまま行方不明となる。その後ロビン・フッドと呼ばれる森の中で無残な他殺死体となって発見され、その異常な殺害方法から、悪魔崇拝のパンク系の若者3人が逮捕された。殺された少年たちのそれぞれの親たちの不審な行動や目撃証言、地元警察のずさんな捜査方法や物的証拠品紛失など、さらには偏見に満ちた裁判と、アメリカ中が注目する中、疑惑を数多く残したまま結審する。
弁護側から調査を依頼された探偵ロン・ラックス(コリン・ファース)は、逮捕された若者を初めから犯人に仕立てようとする警察と世間の偏見に疑問を抱き、証人や被害者遺族についても調べていく。殺された少年の母親パム・ホッブス(リース・ウィザースプーン)も、最初は犯人を憎むあまり死刑を望んでいたが、犠牲者の遺族として同情をかうよう強要されたり、再婚相手の異常な言動に不信に思ったり、次第に裁判自体に疑問を抱くようになる。
最愛の息子を惨殺された母親として、息子を守りきれなかった後悔や、真相を明らかにできなかった無念さでその後の人生にも影を落とすことになる。それはパムだけでなく、この事件に関わった全ての人々が同様に感じていることで、全米でも冤罪事件として今日でも注目されている。
全米を震撼させたこの事件は、裁判上は終結していても、殺害の動機や方法など未解明のまま。もし冤罪だとすると、真犯人は?この映画は犯人捜しがテーマではない。大事件に際し、捜査する警察のずさんさや流言飛語による思い込みの危険性を示しているのだ。科学捜査の進んだ今でも、世間の反応や捜査する側の誤った思い込みで真相を見失ってしまう可能性はある。マスコミが報道する偏見や扇動に惑わされることなく、真実を追求する信念を持つことの重要性が問われている。
今年日本で公開された『白ゆき姫殺人事件』(日本)でも、SNS上の誤った情報によりテレビや新聞・週刊誌などマスコミの報道が加熱し、無実の人を犯人に仕立てあげてしまうことの危険性と愚かさを感動的に描いていた。また、近日公開される『オオカミは嘘をつく』(イスラエル)では、犯人として逮捕されたが証拠不十分で釈放された男を、被害者の父親が勝手に拉致監禁して、惨殺された娘と同じ方法で殺していくという、一見暴力的な復讐劇かと思いきや、意外な展開で驚かせてくれる。そこには暴力に慣れているイスラエルというお国柄と、表と裏の顔を持つ殺人犯を見極める難しさが端的に描かれて、これがまた面白いのだ。 このように、いつでもどこでも起こりうる危険な思い込みに対し、冷静に判断できるようになりたいと心から願わずにはおられない。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://devilsknot.jp/
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