原題 | La mer a l'aube |
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制作年・国 | 2012年 フランス・ドイツ |
上映時間 | 1時間31分 |
監督 | 監督・脚本:フォルカー・シュレンドルフ |
出演 | レオ=ポール・サルマン、マルク・バルベ、ウルリッヒ・マテス、ヤコブ・マッチェンンツ、ジャン=ピエール・ダルッサン、アリエル・ドンバール |
公開日、上映劇場 | 2014年11月15日(土)~テアトル梅田、11月29日(土)~京都シネマ、12月6日(土)~神戸アートビレッジセンター |
~ナチ占領下の悲劇の実話を独仏両面から描き、尊い生が浮き彫りになる~
第二次大戦中、ナチ占領下のフランスで起きた実話の映画化。1941年10月20日、フランス西部のナントでドイツ軍の将校が暗殺される。ヒトラーは、報復として150人のフランス人の処刑を要求。ヒトラーに反感を抱くパリのドイツ軍司令部は、まず50人、一日ごとに50人で3回の執行に引き延ばしを図るのがやっと。政治犯が多く収容されているシャトーブリアンの収容所にスポットが当てられる。ドイツ軍司令官から、銃殺刑にされる人質を選び、名簿をつくるよう命じられたのは、フランス人の副知事。フランスの公務員だからナチの命令はきけないと拒もうとするが、“良いフランス人”を犠牲にするのかと言われ、やむなく名簿をつくる。10月22日、シャトーブリアンの収容所で27名、ナント、パリと併せ計48名の尊い命が犠牲になる…。
銃殺された人質の中には、映画館で反戦ビラを配り逮捕され収容所に入れられた17歳の少年ギィ・モケがいた。彼を主人公に、収容所のフランス人達の姿を描くと同時に、ナチに従う占領下のフランス行政官、パリのドイツ軍司令部、赴任してきたばかりで銃殺を執行させられるドイツ軍の青年兵、暗殺犯の共産党の若者らと、フランス、ドイツ双方の人々の姿を重層的に描く。わずか4日間の出来事が、群像劇として1時間半に凝縮され、テンポのよい見事な語り口により、それぞれの局面に置かれた人たちが、どうふるまい、どう生きたのかが浮き彫りになる。
とりわけ心に残るのは、ギィをはじめ、刑を告げられてからわずか1時間で銃殺された収容所の人たちの姿。彼らは共産主義者だったり、ドイツ占領に反対しただけで、なんら罪を犯したわけでもない。理不尽な死を目前に、家族にあてて書かれた手紙が心にしみる。死を恐れることなく、自分たちの死が、何か役に立つよう祈り、潔く死んでいく姿はただただ尊いばかりだ。
監督は『ブリキの太鼓』のフォルカー・シュレンドルフ。結局、誰もヒトラーの命令に逆らうことはできなかった史実が明るみになる。この映画が、ドイツ人の監督の手で、独仏合作によりつくられたことに、未来への希望を感じずにはいられない。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://www.moviola.jp/tegami/
© ARTE France - 2011 - LES CANARDS SAUVAGES - 7ème Apache Films - PROVOBIS FILM