原題 | Agnès Letestu – L’apogée d’une Étoile |
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制作年・国 | 2013年 フランス |
上映時間 | 1時間33分 |
監督 | マレーネ・イヨネスコ |
出演 | アニエス・ルテステュ,ジョゼ・マルティネス,ローラン・イレール,ステファン・ビュリョン,ピエール・ラコット,ギレーヌ・テスマー,ブリジット・ルフェーブル,ジョン・ノイマイヤー,ウィリアム・フォーサイス,イリ・キリアン |
公開日、上映劇場 | 2014年11月8日(土)〜Bunkamuraル・シネマ、 11月15日(土)~シネ・リーブル梅田、 11月29日〜京都シネマ、 12月6日〜シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
~退いてなお輝き続ける永遠のエトワール~
マルセル・カルネ監督「天井桟敷の人々」がパリ・オペラ座バレエ団でバレエ化(2008年初演)され,同バレエ団が300周年を迎えた2013年には来日公演も行われた。アニエス・ルテステュは,舞台上でガランスと一体となって孤高の哀しみを体現した。その姿は指先まで神経が行き届いて美しく,誰もが魅了される。彼女は300着を超える衣装デザインも担当した。振付は体格,性格ともに彼女と波長の合うパートナー,ジョゼ・マルティネスだ。
アニエスは,本作と同じ監督による2005年作品「アニエス・ルテステュ~美のエトワール」で「椿姫」のマルグリットをぜひ演じたいと言っていた。そして,彼女にとって大きな節目となる2013年10月10日のアデュー公演で,その念願が実現した。本作は,前芸術監督ルフェーブルの言う,コケットでありながら限りなくノーブルでチャーミングな姿を,しっかりと収めている。豊富なバレエシーンと豪華な出演者の言葉で目も耳も潤う作品だ。
フォンテーンとヌレエフの「白鳥の湖」を見てバレエを志した少女は,1983年12歳でパリ・オペラ座バレエ学校に入学し,87年同バレエ団に入団した。そして,88年コリフェ,89年スジェに順次昇進し,90年ヴァルナ国際バレエコンクールで金賞を,91年同バレエ団の有望な若手ダンサーに贈られるカルポー賞をそれぞれ受賞した。93年プルミエール・ダンスーズに昇進し,97年10月31日ヌレエフ版「白鳥の湖」終演後エトワールに任命された。
クラシックバレエからコンテンポラリーまでレパートリーは幅広い。クラシックをマスターしているので彼女を通してバレエの歴史が見える,とフォーサイスは言う。コンテンポラリーではカロリン・カールソン振付「シーニュ」が印象深い。アニエスは,引退の2か月前に踊った作品だが,視線の大切さなど多くを学んだと言う。努力を惜しまず,好奇心が強く,探求し続けるダンサーだ。だからこそ,均整のとれた完全無欠な踊りができる。
ブランカ・リーから膝に負担を与えず踊るテクニックを教えてもらったとか,イリ・キリアンはダンサーの内面的な美しさを引き出してくれるとか,アニエスの語る振付家に関する話が面白い。自分とは正反対の「放蕩息子」のセイレーンや演じるチャンスを待ちわびた「ジゼル」など,彼女自身が演じた役についても興味深い話を聞ける。気になる今後だが,後輩の指導はもとより,踊りも衣装の仕事も続けたいということで,目が離せない。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.alcine-terran.com/shiko
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