原題 | THE DOUBLE |
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制作年・国 | 2013年 イギリス |
上映時間 | 1時間33分 |
監督 | リチャード・アイオアディ |
出演 | ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン、ノア・テイラー、ヤスミン・ペイジ、キャシー・モリアーティ、ジェームズ・フォックス他 |
公開日、上映劇場 | 2014年11月8日(土)~シネ・リーブル梅田、109シネマズHAT神戸 にて公開 12月6日(土)~京都シネマ ほか全国順次公開 |
~シュールな雰囲気に、日本の昭和歌謡曲。このミスマッチに驚嘆!~
監督リチャード・アイオアディの第1作『サブマリン』を観ていないのが悔やまれる。彼が鬼才なのか奇才なのか判断停止の私だが、なんとも風変わりでいて、吸引力は抜群の本作だ。原作は、世界的文豪ドストエフスキーによる『分身(二重人格)』、それをこんなふうに料理してしまうなんて、並外れた想像力&創造力の持ち主なんだろうなと思う。
主人公のサイモン・ジェームズは、要領が悪くて内向的な男。勤続7年にもなるのに、影が薄いため、会社の人間たちに顔も名前も憶えてもらえない。彼は会社のコピー係のハナに秘かに恋しているのだが、彼女にも相手にされず、毎晩、自分の部屋の向かいにあるハナの部屋を、ストーカーのごとく望遠鏡でのぞくのが唯一の安らぎだ。ところが、或る晩、一人の男の飛び降り自殺を目撃、そしてそれから、自分にうり二つのジェームズ・サイモンという男が新しく入社してきて、サイモンの日々は一変する。
画面はとにかく暗く、いつも夕方か夜のよう。主人公が働く会社は厳格な管理体制のもと、“大佐”と呼ばれる謎めいた人物が仕切っていて、時代も場所も特定されていない。未来世界のようでもあり、どこかレトロな感じの建物が醸し出す雰囲気は過去の世界のようでもある。シュールなのに、キッチュ。その不協和音は、全く正反対の性格を持つ“分身”の登場とともにより大きくなっていく。同じ顔、同じ服装、同じ髪型の二人なのに、周囲はそれを変だと思わないのも変だが、サイモンはあいかわらず存在感ゼロで、ジェームズは周囲の視線を独り占めにしていく。ジェシー・アイゼンバーグの二役演じ分けがみごとである。
面白いのは、昭和歌謡曲の使われ方だ。アキ・カウリスマキ監督作品で用いられているちょっと古めのロックンロールなどはわりとぴたっとくるのだが、この映画でいきなり坂本九が歌う『上を向いて歩こう』や、ジャッキー・吉川とブルー・コメッツの『ブルー・シャトウ』なんかが流れてくると、ほんとに驚く。それはたぶん私が日本人だからそう感じるのかもしれないのだけれど…。この不条理劇の結末とその意味するところも謎めいているが、観る者それぞれに強烈な印象を残すことだろう。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://waraubunshin-espacesarou.com
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