原題 | Le Week-End |
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制作年・国 | 2013年 イギリス |
上映時間 | 1時間33分 |
監督 | 監督:ロジャー・ミッシェル 脚本:ハニフ・クレイシ |
出演 | ジム・ブロードベント、リンゼイ・ダンカン、ジェフ・ゴールドブラム、オリー・アレクサンデル、ジュディス・デイヴィス |
公開日、上映劇場 | 2014年9月20日(土)~シネスイッチ銀座、10月11日(土)~シネ・リーブル梅田、10月25日(土)~シネ・リーブル神戸、京都シネマ ほか全国順次公開 |
~パリの空の下、喧嘩がもたらす夫婦の絆~
魅惑のパリを舞台に、イギリス人の熟年夫婦による“喧嘩旅”が面白い!(日本では団塊の世代か?)グルメにショッピングに美術館に高級ホテルと、旅先では気が大きくなり散財しがちな上に、本音連発で夫婦喧嘩が絶えなくなる。辛辣でキワドイ言葉が飛び交う中、見えてくる夫婦のそれまでの人生に共感する部分も多い。そう、決して他人事ではない。共に過ごした時間はその夫婦にしか分からない年輪が刻まれている。時間と共に変化していく関係性もまたいいと思えてくるから不思議。「やっぱりあなたで良かった!」と夫婦の絆を実感できる映画だ。
イギリス本国でロングランヒットしたこの映画は、喧嘩しながらも二人が巡るパリの美しさに誰しもが魅了されたに違いない。特に、食文化に疎い(!?)イギリス人には魅力的に映ったのでは? 凱旋門やパリオペラ座などの有名観光地は勿論、モンパルナス墓地やロダン美術館やパッサージュなど、思わずパリの地図を広げて辿りたくなるようなシーンの連続だ。ラストに登場するカフェバー《ラリビ》で、ジャン=リュック・ゴダールの『はなればなれに』(‘64)に登場するマジソンダンスを踊るシーンがいい。’60~’70年代にはじけた青春時代を送った主人公たちにとって、再び人生を輝かせる時期を迎えているかのように見える。そう、人生はこれから!楽しまなきゃね♪
【STORY】
30年前に新婚旅行で訪れたパリでウィークエンドを過ごそうとやって来たニック(ジム・ブロードベント)とメグ(リンゼイ・ダンカン)。当時泊ったモンマルトル近くのホテルは屋根裏の狭い部屋しかなく、「棺桶みたいな部屋はイヤ!」とメグは怒ってさっさとタクシーで立ち去ろうとする。新婚の頃はどんな部屋でも構わなかっただろうが、熟年になると我慢できない。タクシーでパリ市内をぐるぐる周りながら見つけたホテルが、よりによって5ツ星の《ホテル・プラザ・アテネ》。しかも、ブレア元首相も宿泊したロイヤルスイートのお部屋。料金も聞かずに即決したメグにおろおろしながら付いて行くニック。
何はともあれ、ホテルの窓から見えるエッフェル塔や、モンマルトルの丘から一望するパリに満足して、「住むならパリね」とつぶやく二人。親に依存気味の息子のことや仕事や老後について、はてまた夫婦のセックスについてとあらゆる問題でかみ合わない。特に、旅先だと本音も言いやすいのか、「こんな美味しいワイン初めて♪」と感動するメグに、早期退職勧告されたことを告げるニック。「こんな時に言う?」ホント間が悪い!楽観的で前向きなメグに対し、内気で悲観的なニックはメグに捨てられないか心配で堪らない。
学生時代優等生だったニックに憧れていた後輩のモーガン(ジェフ・ゴールドブラム)と偶然出逢う。世渡り上手なモーガンは今やベストセラー作家となり、チェイルリー公園に面したリヴォリ通りのアパートメントに住んでいるという。メグは、パーティに招待されていそいそと準備するが、メグの浮気を疑ったニックとまたしても口論となる。予想外に豪華なモーガンの邸宅。しかも、若くて美しい妻は妊娠中。何とも羨ましいように見えるが、モーガンもまた常に孤独感からくる不安を抱えていた。果たして、喧嘩ばかりしていたニックとメグはどうなるのだろうか?
喧嘩しながらも同じ方向へ歩いて行く二人。文句の付け方も、励まし方も、笑うタイミングも夫婦ならではのものがある。好きなものも嫌いなものも知っている。二人にしか通じないジョークもある。急に子供に戻っても許し合える包容力もある。それでも、「心配と不安で気の休まる暇がない」と嘆く夫に、「倦怠、不満、怒り、刻々と流れる時間が女が抱える現実」だと自分の不幸に正直に寄り添う妻。弱気な夫を「情けない!」と言って突き放すか、彼の誠実さとして受け入れるか、さて貴女ならどっち?
妻にすがる少々頼りないニックを演じたジム・ブロードベント(『アイリス』『家族の庭』『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』)のアタフタぶりがいい。思えば強い妻を持つ優しい夫の役が多いようだ。軽妙に人生を楽しむメグを演じたリンゼイ・ダンカン(『トスカーナの休日』『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』)の、「情熱的だが冷淡だ」と夫に言われる素っ気なさがいい。晩秋のパリでメグが着こなすナタリー・ウォード デザインの衣装も、『アニー・ホール』('77)のダイアン・キートンみたいにクールでカッコいい。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://paris-weekend.com/
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